Index Top 第6章 それぞれの決着

第7節 殻が破られる


 オメガ試作機・認識番号00000――
 特一級国際指名手配犯。
 三十億クレジットの賞金首。
 クルスフェンサー。
 レイ・サンドオーカー。
 最強の剣士レオン・シルバーの記憶と技術、経験を受け継いだアンドロイド。
 デウス社に対する切り札。
 そう呼ばれてきた、自分。
 だが――
(それも、終わりだ)
 レイは吹き抜けの一番下から、真上に見える四角い空を見つめていた。崩壊したビルの壁面に挟まれた空は青く、どこまでも高い。
 意識はゆっくりと壊れていく。
 起動率一・二パーセント。
 関節損傷個所、十五。
 骨格損傷個所、五十七。
 人工筋肉損傷個所、無数。
 エネルギー伝達機能、停止。
 自己修復機能、停止。
 制御支援コンピューター、損傷。
 両腕前腕、切断。
 コアケース破損。
 コアに亀裂……
「コアに損傷。よって――」
 唐突に、そんな文字が浮かぶ。
(…………?)
 何が起こったかは、把握できなかった。しかし、頭の中に何十、何百行もの文が流れていく。文字は未知のもので構成されていて、読むこともできない。それが、何の情報で、何を示しているのか、分からない。
(何なんだ?)
 しかし、その文字に連れて、意識が覚醒していった。それだけではない。
 コアの亀裂が消えた。それを始まりに、破損していた組織が次々とつながり、修復を始める。その速さは、自己修復機能のそれを凌駕していた。構造的にありえない。
 さらに、両腕の切断面から飛び出した数本の糸のようなものが、近くに落ちていたテンペストの刃と、柄に絡みつく。引き寄せられた柄と左腕、刃と右腕とがつながった。そのまま、複雑な変形を始める。
 その急激な変化の中で……
 レイはひとつだけ理解した。
「ブラックボックスが――開いた」

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13/9/22