Index Top 第6章 それぞれの決着 |
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第6節 イレギュラーの力 |
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オメガの右足が、パワードスーツをまとったレジスタンスの男を蹴り飛ばす。 男は、十メートルも宙を舞い、地面に落下した。何度か転がって止まる。遅れて、持っていた特殊銃が地面に落ちた。気絶したのか、起き上がらない。 「これで、十四人目だ」 ノートゥングの引き金を引きながら、シリックは呻いた。 エネルギー弾を舞うように躱しながら、オメガは後退する。右膝の損傷は直っていない。レジスタンスの連携攻撃で、左肩の関節も砕いた。戦える状態ではない。 だというのに、オメガは平然と戦っている。 レジスタンスの一人が倒れた仲間の元に走った。仲間を担いで、安全な場所へ運ぶ。今のところパワードスーツのおかげで死者はいない。 「オメガの攻撃は、受けた者を確実に動けなくする」 ラインの傍らでライフルを構え、アーディが呻く。不正データを送信し終わった通信施設チームが加勢に戻ってきたが、市販の武器ではオメガ相手に効果がない。足手まといになるのを恐れて、ラインの背後に控えている。 「一班、二班は右へ。三班は左へ向かえ!」 杖を動かし、ラインが指示を飛ばす。 それに従い、レジスタンスの十人が右へ、五人が左へ走る。 一班と二班が、銃を撃った。空を裂く数百発の徹甲弾。それを全身に浴びて、オメガは吹き飛ばされた。それを狙って、三班がレーザーを放つ。狙いは左足。 しかし、オメガは身体をひねってた。レーザーを躱したらしい。人間の目でレーザーは見えないが、機械であるオメガには見えるのだ。 オメガが着地する時を狙い、クキィが二本の光剣を振るう。 「はっ!」 コルブランドとキャリバーンが閃いた。オメガは壊れた右足と左腕をたくみに動かし、身体と左足を守る。光刃によって、壊れた手足が傷つくことには気にしていない。 クキィが跳び退いた。その眼前を、左足が通り過ぎる。 「砕けろ!」 その左足に狙いを定めて、シリックはノートゥングを撃った。 戦いが始まって分かったことであるが、オメガに一番深い傷を与えられるのは、ノートゥングのエネルギー弾と、コルブランド、キャリバーンの光刃だった。 オメガは身を沈めて、エネルギー弾を躱す。 クキィの攻撃も難なく躱し、壊れた右足を強引に動かすという奇怪な足取りで、オメガはレジスタンスに突進していった。最初の異様な速さはなくなっていたが、速いことに変わりはない。 オメガは跳躍し、レジスタンスの一人を蹴り飛ばす。 「…………」 クキィは二本の剣を握り締めるだけで、攻撃できない。 レジスタンスと違い、防御するものがないせいで、反撃を一発でも食らえば命はないからだ。敵の態勢が完全に崩れていないと、攻撃できないのである。 集団の中に飛び込まれては銃撃もできない。 オメガは足を振り回し、レジスタンス二人を倒す。 シリックはノートゥングの引き金を引いた。レジスタンスの人間の隙間を縫って、オメガに迫るエネルギー弾。距離は三十メートルほど。 (俺って……こんなに射撃上手かったか? それに、姉ちゃんって……あんなに強かったか? 二刀流なんて試したこともないのに……。何だ、これは?) エネルギー弾を避けるオメガを見ながら、シリックは自問する。 オメガを前にして、自分の意識は信じられないほどに研ぎ澄まされていた。まるで自分の感覚に、別の誰か加わったかのようである。やろうと思えば、五十メートル離れた的にでも、連続して命中させられることもできるだろう。 「これが、あいつの言ってた、イレギュラーの力ってヤツか……?」 そんなことを思うが。 「おっさん」 シリックは数歩後退して、ラインに声をかけた。 しかし、続きを言ったのはライフルを構えたアーディである。 「マスター。これでは、きりがありません。こちらは段々戦える人間が減っているのに、オメガは平然と動いています。このままでは、負けてしまいます」 「……そうだな。仕方ない」 何かを決心したように呟き、ラインは指示を出す。 「全員、引け!」 その指示に、レジスタンスが戸惑いを見せたが。 「全員、引け! 私の後ろに下がれ!」 鬼気迫るその語気に圧されてか、レジスタンスがオメガに銃口を向けたまま下がってくる。その不審な動向を警戒してか、オメガは動かない。 「何するつもりだ、おっさん?」 「何なんですか?」 光剣を構えたまま、クキィも戻ってくる。なぜ後退の指示を出したのか分からないらしい。疑問符を浮かべて、ラインを見ている。 「おっさん……?」 「………」 シリックの問いに、ラインが答えてきた。ようやく聞き取れるほどの小さな囁き。それを聞いて、シリックはノートゥングを取り落としそうになる。だが、他の人間には聞こえていなかったらしい。 杖をつきながら、ラインはぎこちない足取りで歩き出した。 壊れかけたオメガの方へと。 「マスター!」 「誰も行くな――!」 駆け出しかけたレジスタンスに、シリックはノートゥングの銃口を向ける。その気迫に、レジスタンスの動きが止まった。 ラインはオメガの目の前まで歩いていき、告げる。 「君の相手は――私だ」 |
13/9/15 |