Index Top 第6章 それぞれの決着

第5節 さらば


 命令に従い、オメガめがけてジャガーノートが駆け出す。相手が攻撃動作に移るより早く、右腕を突き出した。攻撃の有効距離はジャガーノートの方が広い。
 しかし、動きは相手の方が速い。オメガは突き出した腕に飛び乗り、右腕を引き絞る。五本の指はまっすぐに伸ばされていた。直接、操縦席に貫き手を打ち込む気らしい。
 もっとも、相手の動きは狙い通りである。
「かかった!」
 肩に隠された重機関砲が、オメガを吹き飛ばす。
(いくら機械でも、反射速度が速くても、演算速度が速くても、高性能の戦闘プログラムが積まれていようと、狡猾さは人間の方が上よ。特に、あたしはね!)
 ミストは心中で叫んだ。四機のビットが動く。宙を舞うオメガに、ビットのレーザーが何発も撃ち込まれた。
 しかし、オメガは空中で態勢を立て直して着地する。さほど効いていないらしい。
 距離は百メートルほど。オメガは走ろうとするが。
 その眉間に、低出力レーザーが当たっていた。
「電撃砲発射!」
 つんざくような爆音と、目を焼く閃光。五十億ボルトという超高圧電撃が、空気を引き裂いて、炸裂する。いくらオメガといえ、内部機構に直接響く電撃は効くだろう。
「まだまだ!」
 両肩のプラズマビーム砲と隠し機関砲を撃ち込む。オメガの落下地点に移動したビットもレーザーを撃ち込んだ。これでどこまで破壊できるか。
「次で決める!」
 ジャガーノートが駆け出す。それに応えるように、土煙を突き破りオメガが飛び出してきた。空中に漂っていたビットを左手で叩き落し、着地する。
 表皮や服は燃え尽き、内部の金属構造がむき出しになっていた。あちこちに損傷が見られ、火花が散っている。右腕は動かないらしい。
 なのに、止まらない。止まる、という概念がないのだ。
 オメガは走る。ジャガーノートとの間合いが、一瞬にして消えた。
「ごめん、兄さん!」
 耳障りな金属音。
 オメガの左手が、ジャガーノートの装甲を突き破る。オメガの左腕は、カウンターの要領で根元までジャガーノートに深々と刺さっていた。
「…………!」
 右足に走った激痛に、呼吸が止まる。オメガの貫き手が、右足を掠ったらしい。ミストは気合を総動員して痛みを押さえ込んだ。気を散らしてはいけない。
 これが、最後にして、最大の好機なのだ。
「あたしの作戦勝ちね!」
 オメガが腕を引き抜く前に、ジャガーノートの両腕がその身体を抱え上げた。

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13/9/8