Index Top 第6章 それぞれの決着 |
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第4節 オメガの本気 |
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オメガの突き出した拳から逃れるように、ジャガーノートは数歩後退った。 アスファルトの道路は砕け、道としての原型を留めていない。周囲の防砂フェンスもひしゃげている。アスファルトの破片が転がる地面には、いくつもの穴が開いていた。銃撃や砲撃の跡である。 ジャガーノートは右腕を上げた。機関砲が火を噴く。 しかし、オメガは両拳で飛び来る弾丸を打ち払った。 「ったく、頑丈ね!」 ミストは呻きながら、ジャガーノートの両肩の砲口を動かす。 放たれた二本のプラズマビームが地面を一直線に切り裂いた。爆発に砂が舞い上がる。これを食らえば、オメガとて無事ではすまないだろう。 しかし、オメガは身を翻して、プラズマビームを躱していた。ジャガーノートの左側に回りこみ、左腕を引き絞る。その俊敏性は、巨体に似合わない。 「ビット!」 ミストは叫んだ。 オメガが飛び退く。その場を四本のレーザーが撃ち抜いた。 空中に、手に乗るほどの人工衛星のようなものが浮かんでいる。攻撃用ビット。それには、高出力レーザー砲が備え付けられていた。これは、ジャガーノートのコンピューターを介して、ミストの意思で自在に動いている。 オメガが退いた分だけ、ジャガーノートは前進していた。左拳がオメガの顔面を捕らえる。金属が軋む音。 「手応えあり!」 オメガが吹っ飛ばされた。巨大な身体が、地面に宙を舞い、地面を転がっていく。が、地面に手をついて立ち上がった。動きに変化はない。 ビットが動く。が、オメガは放たれたレーザーを苦もなく躱してみせた。 (反射速度は、向こうに分がある……) 五感から取り入れた情報を認識し、自分がやるべき行動を導き出す。その命令を全身の器官に伝達し、身体を動かす。生物も機械も、原理的には似たようなものだが、その速度は機械の方が上だ。 オメガが向かってくる。突き出されれる左拳。ジャガーノートは右腕で拳を払った。それは、相手も分かっていただろう。ジャガーノートを追うように今度は右拳を放つ。 ジャガーノートは、すくい上げるように左拳を振ったが。 その時には、オメガが跳び上がっている。左の一撃も、読まれていたらしい。振り上げた拳を蹴って、ジャガーノートの頭部に右足を打ち込んだ。 「きゃッ!」 悲鳴を上げて、ミストは目を閉じた。 ジャガーノートの頭部を攻撃されたからと言って、操縦者である自分が攻撃されたわけではない。だというのに、実際に攻撃されたような錯覚を感じた。 ジャガーノートの両腕も、頭を守るよう上げてある。 しかし、痛みはない。 「あたしが、蹴られたわけじゃないんだから!」 自分に言い聞かせ、ミストは目を開けた。 幸い、視覚センサーは壊れていなかった。だが、モニターにオメガの姿は見られない。街の方向に目を向けようとして……ミストはそれを自制した。 どんな人間だろうと、視界には死角がある。裏を返せば、相手の姿がどこにも見られないということは、相手は死角にいるのだ。 「つまり!」 ジャガーノートの右腕を背中に向け、機関砲を連射した。ビットもジャガーノートの背後に回りこみ、レーザーを連射する。背後の地面が爆裂した。 前へと跳びながら、ジャガーノートの前後を入れ替える。 「やっぱり……」 冷や汗を流しながら、ミストは呟いた。 離れた所に、オメガが立っている。ジャガーノートの頭を蹴った後、背後に回ったのだろう。攻撃していなければ、背中に一撃を受けていた。 そうなれば、操縦席にいる自分も無事では済まなかっただろう。装甲は打ち抜かれなくとも、衝撃は伝わってくるのだ。 「あいつも、こっちの動きに慣れ始めてる……って!」 「機能は把握した。速やかに、破壊する」 呟くとともに、オメガが向かってきた。その動きは今までよりも、数段速い。瞬く間に間合いを詰められ、右腕を払われる。 腕には、分厚い刃物で斬られたような跡ができた。オメガの手刀が表面の装甲を斬ったのである。見ると、腕を包むエネルギーフィールドの出力が増していた。 「今まで、猫かぶってたわね! ジャガーノートの性能見るために!」 頭部を狙った跳び蹴りを、左腕で受け止める。 反対側の足が飛んできた。受け止めるべき、腕はない。 ジャガーノートは大きく後退して、蹴りを躱す。牽制に、プラズマビームを放つが、当たらない。踊るような動作で避けられた。 「これが、本来の性能!」 ミストは唸る。相手の手管は読めた。ジャガーノートの性能を把握した上で、確実に破壊する。今まで負った損傷は、自己修復機能で修復することができる。 まずは、視覚センサーを潰す気だろう。 (相手は、開発された時のレイと同等の基本戦闘技術を持っている。戦闘訓練を受けたとはいえ、あたしの技術じゃ歯が立たない) オメガがビットの放つレーザーを躱しながら、再び向かってくる。 「でも、火力はこっちの方が上! 動きを止めて、一気に叩き潰す!」 ミストは叫んで、命令を出した。攻撃命令を。 |
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