Index Top 第2章 それぞれの目的 |
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第5節 待ち人 |
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薄暗い部屋には、一人しかいない。 机の上に置かれた一台のパソコン。その液晶ディスプレイを見つめながら、ライン・ゴールドエッジは呟いた。ディスプレイには画面いっぱいの文字と数字が写っている。 「博士は、彼はこの一ヶ月の間に来ると言っていた。彼が来た時こそ我々が行動を起こす時。だが、今月はあと一週間しかない」 ラインは×印の書き込まれたカレンダーを見やった。今しがた書き込んだものを含めて、印の数は二十四個である。 「来るのか、彼は?」 不安を覚えて、ラインはモニターを見つめた。一テラバイトもある膨大な情報。パソコンの容量に比べればそれほどでもないが、一ファイルとしては非常に大きい。 彼はこの作戦の要である。彼が来なければ、このデータを公表することもできない。何の伏線も打たずに、ただデータを公表すれば、現在の厄介な状況を破滅的に悪化させることにもなりかねない。 危険な均衡状態は、十五年も続いている。何かが起きれば、それを引き金に事態はどこへ進むか分からない。そのせいで、誰も動かない。 しかし、それもあと一週間。 義手となった左手を見つめ、ラインは独りごちる。 「クルスフェンサー=レイ・サンドオーカー……」 自分にできるのは、レイが来ることを祈ることだけだ。 |
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