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第3節 ガーディアン |
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ギン! と音を立ててテンペストが揺れる。飛んできた弾丸が、刃に当たったのだ。刃を出していなければ、シリックは頭を砕かれていただろう。 「な、何だ!」 「敵だ」 その言葉に応じるように、瓦礫の影からガーディアンが現れる。 背丈は人間の一.五倍。機械の形状としては人型であるが、全身が灰色の分厚い装甲で覆われていた。身体のあちこちに、機関砲、ロケット砲、レーザー砲などの各種兵器を搭載している。しかし、装甲はぼろぼろで、辛うじて動いているという状態だった。関節部では火花が散っている。 「ッ! 食らえ!」 シリックがノートゥングの引き金を引いた。炸裂音を響かせ、残弾の十四発が発射される。電磁力によって凄まじい速度と回転を得た弾丸が、ガーディアンの装甲に突き刺さった。甲高い音が響く。が、効いてはいない。 「まったく……」 レイはシリックの腕を掴み、引っ張った。シリックのいたの場所を、数発の弾丸が貫いていく。これは市販の防弾服で防げるものではない。食らえば、命はないだろう。 ガーディアンの動きを警戒しながら、レイは言った。 「いかにノートゥングとはいえ、真正面からガーディアンの装甲を撃ち抜くことはできない。さっき言っただろ。装甲の隙間や、武器を狙え――」 「分かった……」 空になったマガジンを外し、新しいマガジンを装填する。 ギギギ、と耳障りな音を立てて、ガーディアンが左腕を上げた。その腕には口径十センチのロケット砲が装備されている。その先にはクキィ……。 「姉ちゃん!」 砲口を見つめ、クキィが動いた。 コルブランドを構え、一呼吸でガーディアンの左側へと回り込む。おっとりした外見に似合わぬ素早さである。その動きは素人のものではない。 「はッ!」 気合とともに、ガーディアンの左腕を関節部分から斬り落とした。装甲に覆われた腕が地面に落ち、砂煙を舞い上げる。 だが、ガーディアンが後退しながら、右腕の機関砲をクキィに向けた。クキィに連続して飛んでくる弾丸を躱す技量はない。 テンペストを構えて、レイはクキィの前へと回り込む。機関砲が火を噴いた。 「――――!」 弾道を見切る。レイは驚異的な速度でテンペストを動かし、自分めがけて飛んでくる弾丸を弾き飛ばした。硬い音が間断なく響く。それでは、終わらない。 弾丸を弾きながら、ガーディアンめがけて疾った。 滑らかな曲線を描くように、レイは最小の動きでテンペストを振る。 「十三剣技・一烈風!」 キン! 清んだ音を立てて、装甲で覆われた金属な身体が、袈裟懸けに切断された。動きを止めたガーディアンが倒れる。それきり動かない。 「こんなものか」 振り返ると、シリックとクキィは呆然と自分を見つめていた。 「…………」 ノートゥングでも貫けない頑強な装甲を、内部の金属構造ごと剣の一閃で斬り捨てたのである。人間にできるようなことではない。 「賞金三十億クレジットってのは、伊達じゃない。俺が今まで、テンペスト一本で数々の死線をくぐってきたのも、分かるだろ?」 テンペストを一振りし、二人に笑いかける。 「凄いですね……」 「一体、何をどうしたら、こんな頑丈なものをぶった斬れるんだ……!」 真っ二つになったガーディアンを指差し、シリックが訊いてくる。コルブランドを使ってもこんなことはできないだろう。 レイはテンペストを動かしながら、 「もっとも、どんなに硬い物質でできていたとしても、ただの剣でこんなことはできない。この剣には、ちょっとした仕掛けがしてあるんだよ」 言って、腕を横に振る。テンペストの刃が、瓦礫の角に叩きつけられた。が、瓦礫の角が欠けただけである。斬れてはいない。 「な? 仕掛けを使わなければ、こんなものだ」 テンペストを肩にかつぎ、レイは崩れかけの遺跡に向かって歩き出した。 「あっ。待って下さい」 慌てて、二人が走ってくる。 レイは周囲に目を向けた。砕けた瓦礫の間に、壊れたガーディアンがいくつか転がっている。コア、動力炉に止まらず、装甲や関節、内部骨格まで壊れて、動く気配はない。ここまで壊されたら、修理することもできないだろう。 「何で、こんなに壊れてるんだ?」 それを見ながら、シリックが呻く。 「遺跡のガーディアンって、滅茶苦茶頑丈なんだろ……」 「ああ」 レイは頷いた。遺跡のガーディアンの類は、砂漠の中に放置されていても一万年は動き続ける。これは、自然に壊れたものではない。 「こいつは、誰かが壊したものだ」 「え。それって……」 クキィが呆けたように呟く。レイの言わんとすることを、薄々悟ったのだろう。 レイは失笑するように口を動かした。 「この遺跡は既に、調査され尽くされている。遺産の類は一切残っていないだろうな。九割九分予想していたことだが……」 「何だと!」 シリックが叫んだ。 ノートゥングの銃口で、半壊した建物を示し、 「じゃあ、ここを探しても、遺産は手に入らないってことか!」 「そうなるな。とはいえ……」 レイはテンペストを下ろし、地面を蹴った。 |
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