Index Top 第4章 物語は急展開する |
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第7節 そして、やってくる |
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テーブルの上に置かれた、五枚の原稿用紙。 昨晩ノヴェルから渡された、鋼の書のページ。 「手に入れた経緯はいまひとつ理解できないが……。ともかく、この紙を使えば、鋼の書と同じことができるんだな?」 「そうよ」 シギの問いに、一矢の肩に乗ったテイルが答える。案内者と言うだけあり、鋼の書に関しては、テイルが一番詳しい。テーブルの上に置いてある原稿用紙を指差して、 「これがあれば、この世界に出来事に干渉できるわ。五回だけだけどね」 「でも……」 メモリアが原稿用紙の一枚を手に取った。未知の物体を観察するように裏表を眺め、表面を撫でる。やはり、気になるらしい。 「これで、何とかなるの?」 それは、根本的な問いだった。 鋼の書が手元にあった時は、回数など気にせずいくらでも書き込めた。しかし、今手元にある原稿用紙は五枚。五回しか、現実を書き換えられない。 それを少ないと見るか、多いと見るかは微妙だろう。 「要は、何に使うかだね」 片眼鏡を動かしながら、アルテルフが呟く。 それに、シギが頷いた。 「なら、いつ使うかを決めないといけないな」 「それは、無理ね」 言いながら、テイルが手を振る。 「いつ使うかを決めるなんてできないわよ。鋼の書がハドロの手に渡ったからには、これから何が起こるか予測できないんだから」 鋼の書は敵の手に渡り、物語はあらぬ方向へと進んでいた。今後何が起こるか、分からない。が、それほど不透明というわけでもない。 「鋼の書を手に入れたハドロは、何をする?」 一矢は誰へとなく問いかけた。 「あの怪物をもっと強くする、かな?」 人差し指で頬をかきながら、メモリアが答える。その答えに異論を挟むものは誰もいない。それは言わずとも分かっていた。 「それは、きっと終わってるわね」 テイルが窓の外を眺める。朝の八時。遅めの朝食を食べ終わった後だ。鋼の書が奪われたのは、昨日の夕方である。夜のうちに、ハドロは鋼の書と白の剣を使って、あの怪物を強化しているだろう。 「これから、あいつはどうする?」 一矢は続けて言った。 「そうだな――」 シギは人差し指で白い眉をこする。 「あいつの性格からするに、真っ先に俺を狙ってくるだろうな。強化した結果を試すために、あのでかいディーヴァをぶつけてくる」 「勝てるか?」 「俺一人じゃ無理だな。だが、昨日も言った通り、この街の警備兵を総動員しても、無駄な犠牲者が出るだけだ。軍隊は当てにならん。俺たちで何とかするしかない」 「しかし、力不足だ」 アルテルフが呻く。シギ一人ではエイゲアには勝てない。 一矢は五枚の原稿用紙を手に取って、 「そのために、これがある」 この原稿用紙は、力の不足分を埋め合わせるためにある。数は五枚。乱用はできないが、きっと力になるだろう。 しかし、きっかけがなければ現実を書き換えることはできない。 一矢は、アルテルフを見やった。 「何か、あいつに対抗する武器はないか。強力な銃火器とか、魔剣とか神剣とか」 「ふむ……」 アルテルフは思索するように目を伏せてから、呟く。 「銃は僕のリボルバーしかないけど、ダイナマイトならこの家に二十本ほど置いてあるよ。それを使えばいい。神剣、魔剣は協会に保管されているものを僕の権限で持ち出せる。今から取りに行こう」 「待って……」 呟いたのはメモリア。 シギがため息をつく。 「どうやら、取りに行く時間はないらしな」 |
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