Index Top 第2章 進み始める世界

第9節 予想外の結果


 戻ってきた偵察用の黒装束を調べた結果――
「もっと凄い奴だと思っていたんだが……」
 鋼の書の使い手は、思ったよりも地味だった。何の特徴もない青年、どこにもいる若者だった。特別なのは、妖精と一緒にいたことだけである。戦闘経験はないらしい。無謀にも戦闘用の黒装束相手に曲剣一本で向かっていき、何とか三体を倒したが、返り討ちにあって自分も大怪我を負った。
 だが、死んではいないだろう。
「ともあれ、あの男の言っていたことは嘘ではなかったわけだ」
 馬車を走らせながら、ハドロは呟いた。
 自分の前に現れた謎の男は、シギに黒装束たちを送れと告げてから、一度も姿を見ていない。いなくとも、シギたちの目的地は分かったし、鋼の書の存在も確認できた。あの男がいなくとも困ることはない。
 技術都市ハムト・カウ。そこにはシェルタン・アダフ・アルテルフがいる。
 シギの目的もアルテルフだろう。
 鋼の書の使い手も一緒だ。
 ほぼ確実に、自分はアルテルフに会うことになる。
「鋼の書を手に入れるためには――」
 呟きながら、ハドロは計画を考え始めた。

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11/12/25