Index Top つくもつき on 大井 |
|
終章 B項目記憶処理の術 |
|
「はっ!」 大井は弾かれるように、身体を起こした。 理由は不明だが、焦燥感に任せて慌てて周囲を見る。 そこは、自分と北上の部屋だった。窓から差し込む、夕刻の光。いつの間にか、夕方になっていた。部屋の中央に置いたテーブルと、椅子に座った大井。 「……あれ?」 テーブルに突っ伏して寝ていたらしい。 しかし、何故寝ていたのか、理由が思い出せない。 大井は椅子から起き上がり、ベッドへと移動する。木製の二段ベッドで上が北上、下が大井のものだ。朝と変わらぬベッドである。 顔を近づけ匂いを嗅いでみるが、特に変わった様子は無い。 「夢、よね……? 夢なの?」 何かひどく卑猥な事をしていたような気がするが、はっきりと思い出せない。本当にやっていたのかも分からない。夢で見た内容は覚えていないかの如く。 腕を組み、しばらく考えてから。 「お腹空いたわ」 大井は息を吐いた。 ぱたり。 ダンボール箱の蓋を開け、身体を伸ばす。 両手を持ち上げ背伸びをしてから、北上は周囲を眺めた。 「……夜になってるし」 すっかり暗くなった景色を眺める。交渉の裏手に置かれた段ボール箱。街頭の光が差し込んでくるもの、夜の闇を退けるにはほど遠い。夜の八時くらいだろうか。 「うーん」 目を閉じ、記憶を辿る。 何らかの目的のために提督であるツクモに会いに来て、段ボール箱に隠れ、その後の記憶がない。そもそも、何故提督に会いに来たのかもよく思い出せない。さらに、それを考えようとしても、いまいち意識を向けられない。 「……もしかして、提督ってあたしたちの記憶に干渉できる?」 北上はぼんやりと推論を口にする。 肯定する者も否定する者もいなかった。 |
18/10/11 |