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第6話 妖精画 |
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カイは画架に新しいキャンバスを置いた。F-15号。下書きもなく、真っ白な画布。朝描こうとしていた絵は、後日仕上げることにした。 画架の傍らに置いた机に、ミドリが座っている。じっとカイを見つめていた。 「ミドリ。ええと、何かポーズ取ってくれない?」 鉛筆を回しながら、告げる。机の上に腰を下ろし、両足を伸ばしているミドリ。このままでもいいのだが、なんというか味気ない。 「ポーズ。どんなポーズ?」 逆に訊いてくる。ポーズを取ってくれと言われて、即座に取れる者は少ない。日常的にポーズを取っているモデルか役者くらいだろう。 カイは頭をかいた。 「いや、俺に訊かれてもなぁ。そもそも、妖精画なんて描いたことないし」 人物画用のキャンバスを用意してみたものの、人物とは違うような気がする。風景画用のキャンバスを用意するべきだったかもしれない。妖精画のキャンバスなどない。 「ああ、そうだ」 カイはぽんと手を打った。窓辺の植木鉢を指差す。 「そこの植木鉢の上に座ってくれないか。いつもみたいに」 「うん。分かった」 羽を広げ、飛び上がるミドリ。 植木鉢の上に移動し、そこに腰を下ろす。生まれた場所は落ち着くのだろう。力を抜いて、窓の外を眺めている。やはり自然体が一番だ。 カイは画架と椅子と道具台を、ミドリの左斜め後ろに移動させる。 「カイ、きれいに描いてね」 振り向き、ミドリは一言呟いた。 |