Index Top 妖精の種 |
|
第4話 街の風景 |
|
ミドリは鞄から顔を出し、きょろきょろと辺りを見回す。 「うわぁ」 感嘆したような声を上げた。 初めて見る町の風景。立ち並ぶ建物と、石畳が敷き詰められた道路。整えられた綺麗な街並み。人気のない所を歩いているので、見つかることもない。 「人間の街ってこうなってるんだ」 「人間の街?」 不自然な発言に、カイは訝る。 「俺のところに来る前は、人間の街じゃないところにいたのか?」 「うーん」 ミドリはカイを見上げて、首を傾げた。 しかし、しばらく考え込んだ後、ぽりぽりと頬をかいてみせる。 「思い出せない……」 本当に記憶がないのか、単純に忘れているのか。それは、カイの知るところではなかった。そのうち判明するだろうし、判明しなくとも困ることはない。 「そうだ。カイ」 ミドリは思いついたように声を上げる。 「何だ?」 「副会長さんってどんな人?」 「あぁ……」 カイは額に手を当てて、明後日の空を見上げた。 「変人。というか、芸術狂信者。むかーし、美術館に忍び込んだ泥棒捕まえて、芸術を冒涜する者は生きたまま彫像にしてやる! とか本気で言ってたという噂が……。芸術家としての腕は確かだけど」 「面白そう」 ミドリは微笑んだ。 |