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第7話 絵の完成


 四時間経って、カイは筆を置いた。窓の外は夕暮れ。
 出来上がるまでの時間は作品によって違う。数時間で終わるものもあれば、一週間以上かかるものもある。本気の絵ではないので、これは四時間で終わった。
「もういいぞ」
「……?」
 窓の外を眺めていたミドリが、不思議そうに振り向いてくる。
「何がいいの? あれ、わたし何かしたかな?」
「いや。何かしたって。絵のモデルになってくれって頼んだだろ。忘れてのか?」
「あ」
 カイの言葉に、口に手を当てるミドリ。思い出したようである。というか、完全に忘れていたらしい。日光浴に夢中になっていたのだろう。
「上手く描けた?」
 羽を広げて飛び上がり、カイの隣までやってくる。
「うわぁ」
 自画像を見て、ミドリは嬉しそうに表情を輝かせた。
 植木鉢に座ったミドリの姿をそのまま油絵として描いている。余計な演出や技法は使っていない。ミドリの姿を簡素に絵として描き出していた。
「カイ、すごい。これが、わたしなんだぁ……」
 じっと見惚れるように絵を眺めている。
 一分ほど絵を見つめてから、ミドリはカイに向き直った。嬉しそうに微笑んだまま、カイの右手を掴む。
「ありがとう、カイ」
「どういたしまして」
 カイは笑顔で答えた。

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