Index Top 妖精の種

第3話 副会長の所へ


「なあ。ミドリ」
 カイは声をかける。
 ミドリは植木鉢に座ったまま、窓を眺めていた。
「なに、カイ? ……その格好、出掛けるの?」
 こちらに向き直り、瞬きをする。
 カイの格好。作業着から外出用の服に着替えていた。午前中の作業は中止である。こんな時に絵を描いてはいられない。
「副会長の所へ行く。ミドリのこと訊かないといけないし」
「わたしのこと、何で副会長さんに訊きに行く必要あるの?」
 不思議そうに首を傾げてみせる。
 カイは頭をかいてから、
「貰った種を植えたら妖精が生えて来たって、充分異常なことだろ。俺は『はい、そうですか』って納得できないぞ」
「うん?」
 よく分からないといった面持ちのミドリ。
 カイは持ってきた、鞄を見せた。簡単な荷物を入れる肩掛け鞄。
「この中に入れるか?」
「狭そう……」
 鞄を見つめ、ミドリは不服そうに眉根を寄せた。
「文句言わないの。妖精連れて歩くなんてマネ、俺にはできないぞ。見つかったらどうなるか想像もできん」
 妖精は珍しい。というか、見たことある者などそれこそ数えるほどしかいない。もし見つかったらなら、ミドリを捕まえようとする者も出てくるだろう。
 いらぬ厄介を引き込むのはぞっとしない。
「うーん。カイがそう言うなら……」
 ミドリは羽を広げて飛び上がると、鞄の中に飛び込んだ。

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