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第7話 二人の約束 |
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「冗談はさておき」 ロアは背伸びをした。左手を差し出し、手の平を上に向ける。 そこに降りて腰を下ろし、アルニは不満げに顔をしかめた。 「笑えない冗談です。わたしの自由はないんですか? ずっと監視されてるみたいで、居心地悪いですよ。それに術が暴発したらどうするんですか?」 「術は暴発しない。何百年も昔からある枯れた術だ」 眼鏡を動かし、ロアは答えた。 右手を伸ばして、腕輪を指で摘む。一緒に持ち上がるアルニの右腕。複雑な術式であるが、奇抜なものではない。元々、兵士などの相互監視に用いられる。個人の得意な術により、炎だったり雷だったり。 「それに、探知って言っても常時見張ってるわけでもないからな。オレが探知の魔術使わないと場所分からないし、あんまり遠くに離れられても探知できないし」 「本当ですか?」 訊いてくるアルニに、無言で微笑み、首を縦に動かす。 身体を仰け反らせるアルニ。 「うぁ。嘘言ってる! 絶対嘘言ってる!」 「細かいことは気にするな」 ロアはにやりと口を動かし、アルニの頭に指を乗せた。撫でるように指を動かす。 「最初に言った通り、オレと一緒に旅をしたいならその腕輪をつける。腕輪が嫌なら一人で旅してくれ。オレはどっちでも構わない」 ロアはきっちりと言って、手を引っ込めた。 アルニは十秒ほど考え込んでから、表情を引き締める。 「分かりました。腕輪つけます。だから、ちゃんと硝子の森まで連れて行って下さいよ。わたし一人じゃ、多分辿り着けませんから」 「任せろ」 ロアは力強く頷いた。退屈な一人旅。正直、話し相手が欲しいと思っていたところである。可愛い妖精なら、旅の相棒として充分だろう。 ふと思いついて、尋ねてみる。 「ところでさ」 「何です?」 「アルニは、姿消す魔法って使えるか?」 消失の魔術。足音や気配を消す魔術のさらに高度なもので、難易度は7。極めて難解な術式で、さらに術との相性も関係するため、ロアも使うことは出来ない。もっとも、意外と実用性は低い。 「使えますけど、何に使うんです……?」 訊き返してから―― アルニははっと口元に手を当てた。頬を赤くして、囁くように叫ぶ。 「覗きですか!」 「違う」 ロアは顔をしかめる。 「姿消してれば、人前でも一緒にいられるだろ? 部屋に一人で置き去りにしておくのも気が引けるしな。一緒の方がオレも安心できる」 「あ! そうですね」 アルニはぽんと手を打った。 ロアはため息をつく。 「街に入る前に気づけばよかったな……」 |