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第8話 お風呂 |
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「ふあぁ。お腹いっぱいです」 テーブルの上で、アルニは満足げにお腹をさすっていた。 姿を消してロアと一緒に食堂に出掛ける。姿消しといっても、ロアには半透明に見えるようにしてあった。器用である。 ロアが大盛りの料理を注文し、アルニが周りに気づかれないように三割ほど食べた。どういう原理で自分の体積より大きなモノを身体に入れているのかは不明である。 その後会計を済ませ、宿へと戻った。 午後七時二十七分。 ベッドに寝転がったまま、ロアはアルニを見やった。 「これから風呂に入るんだけど、どうする?」 「お風呂ですか?」 アルニが顔を向けてくる。 ロアはベッドから起き上がり、荷物を開けた。着替えとタオルを 「風呂は順番、オレの順番は七時四十五分から三十分」 宿の風呂は交代制。宿に着いたのが早い人から入ることとなっている。遅いと湯が汚れていることもあるが、どこかで水浴びよりもマシだ。高い宿に泊まればきれいな湯に浸かることもできるのだが、そこまで金は出せない。 風呂から上がった後は、脱いだ服を宿の裏手で洗濯しておく。炎の魔術で軽く熱した後、外に干しておけば朝には乾いている。 「一緒に入るか?」 服とタオルを取り出し、ロアは訊いてみた。 アルニは顔を赤くして言い返してくる。 「入りませんよ!」 「……冗談だ」 ロアはぱたぱたと手を振ってから、 「でも、身体洗わないわけにもいかないだろ? ハンカチで拭いたとはいえ、まだどことなく汚れ残ってるし」 宿に着いてから、アルニは濡れたハンカチで身体を拭いた。しかし、それできれいに汚れが落ちるかと言えば、否だ。 「わたしに考えがあります」 得意げに答えるアルニ。 呪文を唱え、両手を前に突き出す。 「壁よ」 テーブルの上から、透明な板がせり上がってくる。ガラスのような板で、高さ十二センチほど。上から見ると長方形になっている。上面のない箱のような構造。 さらに呪文を唱えると、 「お湯よ」 空中から現れたお湯が、箱の中に流れ込み溜まっていく。 ほどなくして、即席の湯船が出来上がった。 アルニはぐっと胸を張って見せる。 「これで、大丈夫です!」 「便利だな……。魔法」 ロアはしみじみと呟いた。 |