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終章 それは夢か現か幻か

 

「うん……?」
 秋雲は眼を開けた。
 白い天井が見える。
 むくりと上体を起こして、胸に触れてみる。確かな膨らみと柔らかさがそこにあった。足の付け根に触れてみるが、そこには何も無い。
「これは、夢オチ?」
 訝りながら周囲を見る。
 工廠の隅っこに置かれた長椅子に、秋雲は寝かされていた。周りには誰もいない。窓の外には夜のとばりが降りている。白い蛍光灯が無機質に秋雲を照らしていた。
 ずきり、と。
 頭が痛む。
「うぅ」
 手で撫でてみると、たんこぶがふたつ出来ていた。ツクモに投げ飛ばされた時のものだろう。ということは、少なくとも二回目までは現実らしい。
「まぁ、ともかく」
 にまりと秋雲は笑った。
「これはイケる!」


 空を流れる秋の雲を眺めながら、ツクモは口を開いた。
「夕雲」
「何でしょう?」
 隣を歩いていた夕雲が返事をする。
 ツクモは小さく吐息してから、そちらに目をやった。
「秋雲はどうしてる?」
「ネタが思いついたみたいですね。今は猛烈にネーム書き殴ってます。これは線画書き始めたあたりで油断して、締め切り直前に修羅場になるパターンです」
 何故か楽しそうに言ってくる。
「そうかー」
 ツクモは他人事のように頷いた。
 いくらかの間を置いて尋ねる。
「うちの基地って、変態さん多いのかな?」
「ふふ。提督に似たんですよ」
「そうかー……」
 夕雲の言葉に、ツクモは改めて空を仰いだ。
 秋の雲は静かに空を流れている。

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18/12/3