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第3章 抗えぬ誘い


 前回のあらすじ

「俺だ。望み通り北上になってやったぞ」
「マヂで!?」
「マジで」

「北上さんの身体ってどうです? こう、提督の身体と何か違うんです? わたし他人になる経験なんて無いんで、ちょっと興味ありますね」
「まぁ、何より無いもんがあって、あるもんが無いってのが一番違和感ある。なにせ男が女になるんだからな。身体の男女差は大きい」
 ツクモは上着の前を開いた。
「大井っちも触ってみる?」

「………」
 何も言えぬまま、大井が見つめてくる。
 ツクモは自分の胸の感触を確かめるように手を動かした。灰色のスポーツブラの上からでも、確かな張りと柔らかさが感じられる。
 指先で胸の先端を撫でると、微かに痺れるような感覚が走った。
「んっ」
 思わず漏れる声。
 ゆっくりと右手を下へ移動させる。お腹を撫で、腰を通り、スカートを持ち上げる。黒いスパッツに包まれた太股。撫ると滑らかな手触りを感じられる。
 太股を何度か撫でてから、足の付け根へと。
 ツクモはスパッツを生地を摘まみ、真上に引っ張った。
「くっ」
 伸縮性ある生地が股間に食い込む感触に、背筋が震える。
 手を下ろし、指先を股間へと触れさせる。男にあるものが無いというのは、奇妙な感覚だった。足の付け根の小さな割れ目を、スパッツの上からゆっくりとなぞっていく。指先が小さな突起に触れた。
「あ……ん……!」
 痺れるような感触に、ツクモは思わず太股を閉じた。
 何度か呼吸を整えてから、目の前で呆然としている大井に声をかける。
「大井っちも触ってみる?」
 返事は聞かず、ツクモは大井の両手を取った。その両手を、自分の胸に触れさせる。
「!」
 大井の身体が小さく跳ねた。
 そして、大井はゆっくりと手を動かし始めた。灰色のスポーツブラの上から、北上の胸をなで回す。その動きはすぐに大きくなり、乳房を捏ねるように揉み始めた。
「ん。良い感じ」
 片目を閉じ、呟く。
 熱が、胸から全身へと広がっていた。肌が焼けるように熱い。しかし、身体の奥は凍えるように冷たい。呼吸が少しづつ荒くなっていく。思考もゆっくりと緩慢なものへと変化してた。男の時は感じることのない、奇妙な快感。
「次は、直に触って」
 ツクモはブラジャーの裾を掴み、そのまま上に持ち上げる。控えめな乳房が、露わとなった。熱を帯びた肌に、空気が微かに冷たく感じる。
 ごくり、と。
 大井が唾を飲み込んだ。
 ツクモは大井の手を取り、自分に胸に触れさせる。
「北上さん……」
 小声で囁きながら、大井は直接ツクモの胸を揉み始めた。全体を撫でるように包み込み、下から掬うように持ち上げ、手の平全体で押して形を変えさせる。
「んあっ……」
 ぞくりとツクモの背筋が震える。他人に触られる感覚は、自分で触ったものとは全く違うのだ。喉の奥が熱を持ち、脳髄に淡い電流が走る。
 きゅっ。
 と、大井が乳首を摘まんだ。
「ああっ! それ……すご……」
 瞬間、胸から脳天まで電流が走った。
 大井が指で乳首を捏ねるたびに、痺れと快感が背筋を貫く。それは予想していた以上だった。もしかしたら北上は乳首を攻められるのが弱点なのかもしれない。
 食い入るような目付きで、両手で乳首を捏ねている大井。
「気持ちいいですか?」
「ん……あっ、これ……ん……気持ち、いい――! あっ……」
 腰から力が抜けていく。ツクモは大井の肩に手を置き、倒れることを防いだ。身体の違いによる、過剰な反応。北上の身体が感じたものを、ツクモの思考と経験が処理しきれず、より大きな刺激だと錯覚してしまう。
 ツクモはそのまま大井の首に抱きついた。
「こっち、も」
 大井の片手を取り、下腹部へと移動させる。
「……は、はい」
 呆けたように頷きつつ、大井はツクモの太股に右手を触れさせた。
 太股を何度か丁寧に撫でてから、そっと指先を股間に触れさせる。スパッツ生地の上から、形を確かめるように、手を動かし始めた。
「あっ……。んっ」
 膣の奥が熱を持っている。まるで何かを求めるように。
 多少の躊躇いを含みながらも、大井の手は止まらない。スパッツ越しに秘部を優しく撫でている。形を確かめるように、もしくは味わうように。
「素敵……」
 大井は、するりとスパッツの中へと手を差し込んだ。
「ッ!」
 ツクモは肩を跳ねさせるが、大井は止まらない。
 躊躇無く、手を北上の秘部まで差し入れる。そのまま、その形を確かめるように丁寧に愛撫を始めた。割れ目を指で撫で、淫核を摘まみ、膣口を指先で軽くひっかく。
「んっ……あっ……! んんっ……あっ、はっ! んんんっ……!」
 下腹部から全身に走る快感の衝撃に、ツクモは我知らず声を漏らしていた。喉の奥が熱い。意識に霞が掛かったように、思考ができなくなっていく。
「あぁ……」
 熱に浮かされたように、大井が荒い息を吐き出していた。
 ツクモは身体を起こしつつ、そっと自分の胸を撫でる。
「舐めて」
 そう告げて、大井の顔の前に胸を突き出した。
 促されるまま、大井が乳首を口に含む。
「んっ!」
 胸から走る痺れに、ツクモは思わず眼を閉じた。
 大井はツクモの身体に手を回し、口を動かす。甘噛みしながら、舌先で乳首を舐め、優しく転がした。一度口を離し、胸の谷間を舐めてから、反対側へと。
「あっ、は……大井っ……、ああっ! はっ! んんんっ!」
 声が抑えられない。
 それでもツクモは空いた手を、スパッツの中に入れ、大井の手に触れた。その人差し指を取り、膣口へと触れさせる。
 つぷり。
 人差し指の先端が、膣へと滑り込んだ。
「!」
 大井が大きく跳ねる。思わず胸から顔を放した。
 その顔を見下ろし、ツクモは笑ってみせる。
「これが北上さんの中だよ? どうかな?」
「…………」
 言葉も無く見つめてくる大井。
 ツクモは大井の手を促し、指を奥へと差し込んでいく。身体の内部に何かが入ってくる感触。腰の奥が満たされるような奇妙な感覚。
 大井の手に自分の手を添え、ゆっくりと指を上下させる。
「あっ……。んん……。もう……!」
 指の動きに合わせて、身体の奥から熱が込み上げてきた。大井の指の動きをより大きくより深くへと促す。それに伴い熱は勢いと大きさを増し、そして溢れた。
「……んっ! ああっ、イくっ! あっ、んんっ! うんっ……!」
 背骨を駆け上がる衝撃に、思わず背を丸めて眼を閉じる。目蓋の裏に星が散り、身体が何度か痙攣した。両足を閉じて大井の手を挟み、体内にある指を締め付ける。
 数秒してから、ツクモは眼を開いた。
 呼吸を整えながら、大井の指を膣から抜き取る。物足りなさげに疼く下腹部は無視して、大井の手をスパッツから引き抜いた。
「……」
 何も言えずにしっとりと濡れた自分の手を見つめる大井。
「どうだった?」
「………」
 返事は無い。
 ただじっと自分の手を見つめ、それからツクモを見つめてくる。
 ツクモはブラジャーを下ろし、両胸をカップに納めた。はだけていた上着を閉じ、ボタンを留めていく。無意味に肌を晒しているのは、気が進まない。
「これで気が済んだ……ん?」
 ぐらり、と。
 不意に左足が崩れた。糸が切れたように。身体が傾き倒れかけるも、咄嗟にテーブルを掴み、転倒を防ぐ。突然の事に混乱しかけるが、それでも思考は淡々と動いていた。
 左腕に上手く力が入らない。まるで糸が切れたように。右腕や足からも力が抜けていく。意識接続の副作用、ではない。
「お前……」
 目蓋を半分下ろし、正面を見ると。
 大井はぺろりと自分の右手を舐めてから、
「はい。一服盛ってみました」
 邪悪な笑みを浮かべた。

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18/9/21