Index Top 第2話 シェシェノ・ナナイ・リリル

第1章 リリル襲う!


「発情……の、魔法?」
 浩介は訊き返した。理解できなかったわけではない。
 リリルから距離を取るように、後退る。
「!」
 電気のような刺激に、身体がぴくりと跳ねた。
 視線を落とす。乳首が勃っていた。シャツの上からでも、はっきりと分かる。きゅっと皮膚が引きつるような、そんな感じ。
 布地に乳首がこすれ、電気が走った。男とは全く種類の違う、性感。
(これが、女の快感ってヤツか?)
 二歩で距離を詰められ、リリルに肩を捕まえた。
 また、身体が跳ねる。
(まずい! 何か分からんけど、まずい! とにかくまずい!)
 猛烈な焦燥を感じたが、身体が動かない。
 リリルが不敵に笑い、右手を伸ばした。浩介の左胸にそっと手の平を触れ、乳首を捻り上げる。人差し指の腹と親指で、痛みを感じるほど強く。
「ひぅっ、ああああっ!」
 感電したような衝撃に、浩介は悲鳴を上げていた。全身を駆け抜ける未知の感覚。男とは比べ物にならない女の快感――なのだろう。しかし、思考も身体も、それを気持ちいいものと認識していない。
 浩介はその場に座り込んだ。立っていられない。恐怖とともに、呟く。
「……何なんだよ、これ」
「どうだ? 女って気持ちいいだろ?」
 声は耳元で聞こえた。背後に回りこまれている。
 はっと顔を上げるが――遅い。リリルの両手が、シャツの中に滑り込んでいた。胸を直接、鷲掴みにされる。
「っ! ……んっ!」
 浩介は咄嗟に両手で口を押さえた。声を上げるのだけは、ぎりぎり耐える。声を上げてはならない。本能が告げていた。
「無駄な抵抗だな。せいぜい頑張れよ」
 面白そうに笑いながら、リリルが両手を動かす。
 自分の巨乳を浩介の背中に押し付けながら、五本の指をそれぞれ別の生き物のように蠢かせた。指の動きに合わせ、柔らかい乳房がむにむにと変形する。
「うっ。んっ……」
 手馴れた指捌きに、身体はなすすべなく反応していた。意思とは関係なく、全身がびくびくと小刻みに震える。自力ではどうすることもできない。身体に力が入らない。
 噛み締めた歯の間から、声が漏れた。
「んっ、ああっ!」
「さわり心地いいぞー、お前のおっぱい。手に吸い付いてくるみたいだ」
 リリルが嬉しそうに告げてくる。
 ぎゅっと乳房を強く握った。
「! んんんッ!」
 奥歯を噛み締め、浩介は仰け反る。目元から一筋、涙がこぼれた。
 左手を床につき、リリルから逃げるように腕を引く。
「お前はアタシの獲物だ。逃げられると思うなよ」
 耳元で囁く、リリル。
 手の動きを止める。
 浩介は力を抜いた。しかし、それは次の攻撃のために手を休めただけである。
「狐族って、耳が弱点なんだろ?」
 にんまりとリリルが笑った。
 すっと血の気が引く。
「ちょ、っと待て! それは、やめ――」
 言い切るよりも早く、リリルがキツネ耳の先を軽く噛んでいだ。前歯で、キツネ耳の先端を甘噛みする。今までとは違った快感に、浩介は総毛立った。
 身体が跳ねるだけで、声は出てこない。
「おおぅ。ホントに効く」
 納得しながら、リリルは浩介の乳首を摘んだ。
 びくりとする浩介を無視し、人差し指と親指を使って、転がすように乳首をいじり始める。キツネ耳を甘噛みするのも忘れない。
「んんんっ、ああっ!」
 甘い喘ぎ声。口を押さえても、抑えられない。
 乳首を転がしたり、押し込んだり、弾いたりしながら、頭のキツネ耳を吸ったり、舐めたり、噛んだりしている。その動きひとつひとつが、快感となって脳髄を直撃していた
 諭すように、リリルが呟く。
「正直になれよ。我慢は身体に毒だぞ」
「う、るさ……い」
 浩介は言い返した。
 屈するわけにはいかない。屈したら、男として大事なものを失ってしまう。
「あっそ。じゃ、イってみるか?」
「え?」
 訊き返した瞬間。
 ―――!
「っ! う、あああああ、あああッ、あああああッ!」
 浩介は絶叫のような悲鳴を迸らせた。
 落雷のような電撃が奔り、意思とは関係なしに身体が大きく仰け反る。目の前が白く染まり、何も見えなくなった。手足が痺れて、言うことを聞かない。頭の中に火花が散り、思考も止まる。何も考えられない。
 確実に、数秒間意識が途切れた。
「……思ったより凄いな」
 リリルの声で我に返る。
 浩介はフローリングの床に突っ伏していた。
「イったのか? 俺は……」
 自問するように囁く。女として、絶頂を迎えた。絶頂を向かえさせられた。男の絶頂とは全く違う、怒涛のように押し寄せる衝撃。
「まだ終わりじゃないぞ」
 尻尾を掴まれる。
 浩介は固まった。声も上げられない。身体の中で最も敏感な器官のひとつ。この身体に慣れていないせいで、尻尾への刺激は数倍に感じる。
「狐族の最大の弱点は尻尾。覚悟はいいか?」
 無慈悲な宣告とともに、リリルは尻尾を攻め始めた。
 尻尾の中ほどを左手で固定し、根元を右手でやや強めに握る。男のものを扱くように、右手を上下に動かした。
「うあああああっ!」
 電撃が背筋を駆け上がる。声を抑えることはできない。初めて尻尾を撫でた時と同じ寒気のような感触が、性感となって身体の芯を突き抜けた。
 失神しそうなほどの快感。
 手で床を引っかきながら、浩介は声を絞り出した。
「んあっ。やめ、やめてくれ。あああっ!」
「嫌だね」
 あっさりと拒否するリリル。
 尻尾を、毛の向きに逆らうように撫でる。両手で強く握り締める。根元辺りを上下に扱く。先端を口に咥えて味わうように噛む。鞭のような自分の尻尾を絡ませる。それらは漏らすことなく快感となって浩介を襲った。
「ああっ、たのむ。や、うあぁ……! やめて、くれ」
「やめてとか言ってるくせに、腰は誘ってるぜ」
 リリルが笑う。
 浩介の腰は、突き出すように持ち上がっていた。リリルが尻尾を嬲る動きに合わせて、ぴくぴくと跳ねている。身体が言うことを聞かない。
「そろそろ、メインディッシュといくか」
 舌なめずりをしてから、リリルはトランクスごとジーンズをずり下げた。両者を貫いていた尻尾は、きれいにすり抜ける。
「やめ……て、くれ……!」
 何も生えていない、子供のような恥部が露わになった。言い訳もできないほどに濡れている。垂れた蜜が、太腿まで垂れていた。
「これは……感じすぎだぞ、コースケ」
 苦笑しながら、リリルは浩介の尻を撫でる。
 浩介は顔を赤くして、言い返した。
「うるさ……ひゃぅっ!」
 割れ目を撫でられ、浩介は何度目か分からない悲鳴を上げる。
 尻尾を捕まれているせいで逃げることもできない。指を動かし、常に尻尾を刺激している。そもそも脱力して、満足に動くことすらできなかった。
 リリルは割れ目を指で撫でつつ、恥丘を指で押す。
「あ……ああ、んん! たのむ、ふあぁ! から、やめ、やめて……!」
 浩介は涙を流しながら、懇願した。許容量を超える快感の連続。気が狂いそうだ。今は気合だけで耐えている。だが、この責め苦を続けられたら、正気を失う。
 リリルは楽しそうに、浩介の秘所を嬲っている。
「うああ、んん! やめ、て、んん!」
「ひとついいことを教えてやろう」
 指を止めて、リリルは言った。面白いことを閃いた口調。それはリリルにとって面白いことであり、浩介にとっては、およそ面白いことではないだろう。
「何を、する気だ……?」
 震えながら、訊く。
 リリルは割れ目の上の辺りに指を伸ばし、
「ここが女の快感の核。陰核、クリトリス、だ」
 クリトリスをきゅっと摘む。
「……! ……ッ! ……ッッ!」
 目蓋の裏に火花が飛んで、身体が跳ねた。突っ伏した状態から身体を跳ね上げ、弓のように仰け反る。喉が引きつって声は出ない。細い吐息だけが漏れた。何かを掴むように手が伸びたが、何も掴めない。
 五秒ほど意識を飛ばしてから、フローリングに突っ伏す。
「いいイきっぷりだ」
 感心するリリル。
 女の快感は、男とは質も量も違う。雑学として知っていたが、今の状況を打破するのには役に立たない。失神するほどの快感に、脳髄が焼けつく。男の身体では、この快感には一度として耐えられないだろう。
「聞いてるか? コースケ」
 指でクリトリスを弾く。
「……っぎ!」
 浩介は再びイった。クリトリスを直接摘まれた時ほどではないが、軽い絶頂が身体を跳ねさせる。自分の意思ではどうすることもできない。
「あ。面白い」
 リリルは呟いた。立て続けに、指でクリトリスを攻める。
「ッ、アッ! あぐっ! ま、待てッッ、ひぃ! 俺は、あっ! あんたッ、あああっ! やめ、んっ! おも、ちゃ、っあ! じゃ、っ、ないっ!」
 一秒おきに達しながら、浩介は必死に言葉を紡いだ。
 脳が半分以上溶けている。自分が誰で、何をしているのかも分からなくなり始めていた。陵辱を甘受するしかない。それでも、全力で理性を掴み、抵抗する。理性を失ったら、終わりだ。男として。人間として。
 リリルは指を止める。
 浩介は脱力して、荒い呼吸を吐き出した。
「何言ってんだよ? お前はアタシの、お・も・ち・ゃ」
 つぷ、と。
 人差し指が、膣内に差し込まれる。
「っく!」
 喉の奥を突き上げられるような、衝撃。
 浩介は抵抗するように、下腹に力を入れた。身体の中に異物が侵入する、未知の感触。今までの快感は、男の延長としてまだ理解できた。しかし、膣内に指を入れられるのは、男には想像もできないものだった。
「さすがは処女だ。きゅうきゅう締め付けてくる。初々しい反応だねぇ。ついでに、ここがGスポットなんて呼ばれる場所だ。覚えとけよ」
「うぎ、あがが……!」
 奇怪な声を上げて、浩介は床を掻き毟る。
 膣内の奥を爪で引っかかれた。女の器官から放たれる快感に、涙と涎を流しながら、もう何度目か分からない絶頂を迎える。
 指が抜かれた。
 浩介は再び脱力する。肩越しにリリルを見やった。
 リリルは尻尾から手を放し、腰に巻いていた布を脱ぎ捨てる。巻きスカートのような黒い布。漆黒のショーツが露わになった。
 恐々と訊く。
「何……を、する気だ?」
「Erection the Rod」
 呪文とともに、股間から男のものが突き出した。力強く勃起した男性器。かなりの大きさと太さで、ぴくぴくと脈打っている。
 リリルはショーツを脱ぎ捨てた。
「女になった男が、男のものを生やした女に、無理矢理処女を奪われる。そそるシチュエーションだとは思わないかい?」
「思わない!」
 答えてから、浩介は這うように逃げる。手足が痺れていて、思うように動かない。しかし、逃げなければならない。捕まってはいけない。
「捕まえた」
 あっさり尻尾を掴まれた。現実は過酷で無情である。浩介は一メートルも移動していない。捕まえるのは、簡単なことだった。
「もぅ……許し、て」
「嫌だね」
 リリルは浩介の身体を抱え上げ、リビングテーブルに乗せた。抵抗する力も残っていない。蜜の溢れた秘所が、丸見えになる。
 浩介の腰を持ち上げ、リリルは自分の一物を膣口に触れさせた。
「や、まっ――」
「お前の処女は、いただくぜ」
 ずん。
 男のものが、一気に刺し込まれる。
「っ……! んんん……!」
 噛み締めた歯の間から、息が漏れた。指を入れられた時の、数倍の衝撃。痛みと快感が同時に爆ぜる。横隔膜を含めた全身の筋肉が硬直して、声も出せない。両目からとめどなく涙が溢れてくる。
「いいねぇ。三十年ぶりの女だ!」
 リリルは左手で尻尾を掴んだまま、腰を前後させた。
 太い肉棒が膣内を乱暴に動き回り、容赦なく子宮口を突き上げる。腰が尻に打ち付けられる、ぱんぱんという音と、ぐちゅぐちゅと濡れた音。
「うあ! ああっ、ああ、ああっ!」
 抽挿と連動する痛みと快感に、浩介は引きつった喘ぎ声を上げた。快感の連続に、思考が溶けてしまい、もはや何も考えられない。
 ぎゅっと尻尾を握られる。
「ひあああ!」
「くーっ。締め付けてくるぜ」
 リリルは尻尾を弄りながら、締め付けを楽しんでいた。
 浩介にのしかかり、胸に手を回す。乱暴に乳房を掴み、弄り回した。中指で乳輪を撫でながら、人差し指と親指で乳首を摘む。
「あっ……! あっ、あああっ!」
 あまりの快感に、自分が誰かも分からなくなっていた。
「ああああっ! もう、だめ! んんっ。やめて……」
 ぴたりと動きが止まる。
 膣から肉棒が引き抜かれた。自分を捕まえていた手も放れる。
 肩越しにリリルを見やった。
「う……え?」
「希望通り、やめてやったぜ」
 意地悪そうに笑いながら、リリル。
 涙と涎を垂れ流したまま、その肉棒を見つめる。理性は跡形もなく吹き飛んでいた。頭の中には、快楽を求める本能だけが残っている。
「欲しいんだろ?」
「………」
 無言で頷く。
 リリルは自分のものを手で撫でながら、
「お願いしてみな。私を犯してください、ってな」
 ごくりと涎を飲みこんでから、
「俺を、犯してくれ! その肉棒で無茶苦茶に犯してください!」
 言い終わるよりも早く、リリルは浩介を貫いていた。
「っ! イイぃっ!」
 左手で尻尾を、右手で乳房を攻めながら、キツネ耳を口に含む。体中の性感帯を同時に刺激され、種類の違う快感が同時に弾けている。
 その刺激に、遠慮なく甘い喘ぎ声を上げていた。
「あはああっ、きもち……っああ、いいい! よぉお……」
 だらしなく舌を垂らし、獣のように悶える。自分が誰で、何をしているのかも分からない。右手で自分の胸をこね回し、左手で淫核を弄る。
 誰に構うこともなく、溢れる快楽を一心に貪った。
「おい、ナカに出すぞ。受け止めろ!」
「ああっ! はいいいぃ!」
 リリルが小さく震える。浩介の身体の奥に、大量の精が解き放たれた。
 熱い衝撃に、今までにない絶頂感が爆ぜる。
「……ああああ…………あっ!」
 掠れた声を上げて。
 完全に、意識を失った。

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