Index Top 第3章 時間の埋め方 |
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第6節 力の使い方 |
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「――あるのか! この世界に、拳銃が!」 驚いて、一矢はシギを見やる。この世界は、自分が無意識に作り上げた空想世界。剣と魔法の世界である。近代的な銃火器など存在しないと思っていたのだ。 「火薬の爆発力で金属の弾丸を飛ばす武器だろ。確かに威力は大きいが、武器としての性能はおせじにもいいとは言えないな」 「何でだ?」 「何と言っても、命中率が低い。十メートル離れた相手にはまず当たらない。それに一発撃つたびに、弾と火薬を入れ直さなきゃならない。おまけに、暴発の危険性もある」 「つまり、古式銃か」 一矢は頭をかいた。この世界にある銃は、現実世界における中世時代に使われていたものと同じである。手に入れたとしても、扱えそうにはない。 テイルが訊いてくる。 「ねえ、あなたの世界にも銃ってあるの?」 「沢山あるぞ。リボルバー、オートマチック、ライフル、ショットガン、サブマシンガン。どれもこの世界の銃よりも、威力も精度も高い。連射も利く。念のため言っておくと、一般人が手に入れられるような代物じゃないけど」 「凄いんだね。イッシさんの住んでた世界って」 メモリアが感嘆の声を上げるが、一矢は怪訝に眉を動かした。 「そうか……?」 現実世界の拳銃は、人間が扱う武器としては殺傷力が大きすぎる。拳銃が欲しいと思ったのは、人間よりも強い敵が存在するこの世界にいるからだ。現実世界では欲しいなどとは思わないだろう。 「話を、戻そう」 一矢は呟いた。話を脱線させている場合ではない。 「敵と戦うことはもういい。だけど、せめて自分の身は自分で守りたい。この間みたいに、足手まといにはなりたくないんだ」 「ふむ」 頷いて、シギは一矢の刀を見やった。刀――鉄を鍛えて作られた武器。それをじっと眺めてから、小声で言ってくる。 「これから来る敵を考えると、得物が質がいいだけの剣っていうだけじゃ力不足だな。気術も魔法も使えないなら、せめて神剣か魔剣が欲しい」 「神剣、魔剣?」 一矢はその名前を繰り返した。 「名前からするに……神気が込められた剣と、魔力が込められた剣だと思うけど、具体的にどういうものなんだ?」 「ん? 神剣ってのは、神気を定着させて斬れ味や強度を増した剣だ。魔剣は、魔力を定着させた剣――強度、斬れ味は神剣に劣るが、始めから炎や冷気を帯びていたり、斬ると同時に特殊効果を発動させたりする。ただし、魔剣を使うには魔法の資質がいる。どっちが、有用ってわけでもないが」 「それで、どうしたら手に入るんだ?」 訊くと、シギは肩を落とした。 「……両方ともそうそう容易く手に入るもんじゃない。専門の鍛冶師じゃないと作れないから出回ってる量も少ないし、安いものでも普通の品の十倍はする」 「でも、博士さんなら一本くらい持ってるんじゃない?」 メモリアが言ってくる。 それに、シギが頷いた。 「言われてみればそうだな。あの博士なら、神剣や魔剣の十本や二十本、こっそり隠し持ってそうだよな。さっそく訊いてみるか」 「そういうことなら、鋼の書を使えば確実よ」 テイルが言ってくる。鋼の書を使い、アルテルフが神剣、魔剣を何本も持っているという展開を書けば、強力な武器が手に入るだろう。 しかし―― 「鋼の書は使わない」 「あのねえ」 それを訊いて、テイルが嘆息した。 メモリアの肩からふわりと飛び上がると、一矢の目の前まで飛んでくる。人差し指を振りながら、呆れと怒りが入り混じった口調で言ってきた。 「あなた、いつまで鋼の書を怖がってるのよ。鋼の書はあなたの使い方次第で、どうとでもなるの。でも、怖がってたら、いつまでたっても何もできないわよ!」 「ああ……」 一矢は気弱に答える。テイルの言うことは正しい。だが、恐ろしいという気持ちを、克服するのは難しい。テイルに叱咤されたくらいで、どうにかなるものではない。 ため息をついて、一矢は空を見上げた。 そろそろ昼である。 |
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