Index Top 目が覚めたらキツネ

第5節 見張る者


「合流したな」
 物陰に隠れ、リリルは呟いた。
 望遠鏡を使い様子を伺っていた。重くて使いづらいが、魔法では気づかれる可能性がある。守護十家の人間二人に、封力結界の術を逃れた空刹。あと、この地域を担当する退魔師。名前は宗次郎だったような気がする。
 一人では勝ち目がない。
 リリルは望遠鏡をしまった。
「ここまでは問題なし」
 厳密な計画を立てているわけではない。自分の本業ではない雇われ仕事。払われた代金分はきっちり働くが、余計なことをする気もなかった。
 ポケットの中で通信機が震える。
 リリルは通信機を取り出した。携帯電話に似た通信機。自動で暗号をかけられるらしい。値段は値切って五百ドルだった。ボタンを押し、耳に当てる。
「どうだ、そっちは?」
 聞こえてくる若い男の声。
 リリルは答えた。若干癖のある日本語。
「順調だ。目立った問題はないだろ。そっちはどうだ?」
「遅れている」
 答えは短かった。
「……大変だな」
「他人事みたいに言うな」
 言い残して、通信機が切れる。

Back Top Next