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第4節 目的遂行のために |
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ジャックはポケットから煙草の箱を取り出した。 中から煙草を一本を抜き取り、口にくわえる。指をかざすと、火かついた。 寒月との戦いで負った傷はおおむね治っている。右腕もきちんとつながっていた。だが、服についた傷と血はどうしようもない。 「これから、どうする?」 自分と相手のとの戦力を考える。 自分は寒月に手酷く斬られたが、体力は七割くらいまで回復していた。 寒月にはヴェノムを突き刺している。何もしなければ、一週間は動けないだろうが、何かしらの方法で回復している可能性が高い。ヴィンセントとカラも魔獣との戦いで消耗したはずだが、上級妖魔の回復力では全回復しているだろう。 「あいつらと戦って私は勝てるか?」 答えは自問する前から出ている。 以前はチェインの襲撃に乗じて攻められたが、今は一人で三人と戦わなければならない。相手が寒月一人だけならば、どうにかなるだろう。だが、ヴィンセントとカラが加わっては、確実に負ける。 仮に、寒月が行動不能でも、ヴィンセントとカラは戦えるのだ。あの二人は、何か切り札を隠し持っているように思える。二対一でも勝てるかどうか怪しい。 何にしろ、自分だけでは明日香を捕らえることはできない。 「少なくとも、仲間がいれば……」 煙草の煙を吐き出し、独りごちる。 第一に浮かぶのは執行者だが、他の執行者を仲間として呼ぶのは難しい。実質的に不可能と言える。与えられた任務は一人で片付けなければならないのだ。 人間は、何とか説得して仲間に引き入れることはできるかもしれない。だが、生身の人間では力不足である。魔道士ならば、役に立つかもしれないが、魔道が廃れた現在では魔道士自体、まず見つからない。説得するのにも時間もかかる。 残るは妖魔だが、これも無理だ。寒月のような無闇に人の好い執行者を除いて、執行者は妖魔に嫌われている。何をしても、協力はしてくれないだろう。 だが…… 「利害が一致していれば、どうだ?」 執行者を嫌う妖魔でも、利害が一致していれば協力してくれるかもしれない。限界まで追い詰められた者ならば。 そして、ジャックはその条件を持つ妖魔を一人だけ知っている。 |