Index Top

後編 妖精の急所


「今度は、何する……の?」
「痛いことはしないって」
 不安がるミィに、カイムは宥めるように笑いかけた。
 左手でそっとミィを掴んで、持ち上げる。紙細工のように軽い身体。同じ大きさの生物に比べてもその重さは半分以下だった。赤い髪が下に流れる。
 カイムは人差し指を曲げて軽く肩を固定した。
「マスター?」
 潤んだ瞳で見上げてくるミィ。
 その平らな胸に優しく指先を当てる。なめらかな布の肌触り。服の上からなので直接肌には触れていないが、それでも十分だった。
「ん」
 小さい息を漏らして、ミィは目を閉じて顔を横に向けた。
 指先に膨らみは感じられない。人形のような小さな身体で、外見年齢はせいぜい十二歳くらい。辛うじて膨らみかけていることは感じられるが、胸の大きさは期待できない。
「でも、ないものは期待していないよ」
 独りごちてから、カイムは指を動かし始めた。
 決して力は込めず、優しく動く指先。緩い円を描くように、ミィの胸を撫でる。指に伝わってくる生き物の暖かさと、女の子の柔らかさ、妖精の儚さ。
「んん……」
 ミィが何かを拒むように、首を左右に動かす。
 赤い髪と緑色の帽子が微かに揺れた。羞恥心と興奮に頬が赤く染まっていて、呼吸も荒いものになっている。一度達する寸前まで持ち上げられているのだ。少し撫でるだけであっという間に快感が湧き上がってくる。
「気持ちいいか?」
 声を掛けるが、ミィは答えない。
 カイムは指の動きを止めず、なだらかな胸を丁寧に刺激していく。指の動きに合わせて、ミィが身体を動かす。拒否するような、期待するような、動き。
「んん、ふあぁ」
 このまま撫で続ければ、おそらく胸だけで達するだろう。
 カイムはミィの胸から指を放し、緑色のワンピースの中に指を差し入れた。指の腹がショーツの上から大事な部分へと触れる。
 さきほどから何度も撫でられ、じっとりと濡れていた。
「あ、マス、ター……。待っ、て」
 擦れ声でミィが制止するが、カイムは無視して指を動かした。微かな指のざらつきと凹凸が、小さな秘部を刺激する。
「ん、ふああぁ……んんんンッ」
 甘い声とともに、ミィが身体を震わせた。
 さきほどは下から擦るような刺激。今は上から撫でるような刺激。大事な部分への刺激に、胸を撫でていた時よりも大きな反応を見せる。
「ん、あぁ、おかしく……んんぅ。なっちゃ、うよ……あぁぁ」
 首を左右に振りながら、ミィは甘い悲鳴を上げていた。目元にはうっすらと涙が滲んでいる。おそらくは許容できる限界近い気持ちよさなのだろう。
 カイムは苦笑しなががら、呟いた。
「可愛い声だなぁ」
「マスター、んんッ、言わない、でぇ……ふあぁ」
 ぱたぱたと抵抗するように足を動かすミィ。
「じゃ、もっと可愛い声出してみて」
 カイムは親指でミィの胸を撫で始めた。
「んん!」
 ミィの身体が大きく反応する。今までは一度に一ヶ所しか弄っていなかった。しかし、同時に二ヶ所を攻められ快感が一気に増す。
 両手で別の動きを同時に行うのは難しいが、無理ではない。
「それ、は……駄目ッッ! 待って、マスター。待って……!」
 虚ろな赤い瞳と、荒い呼吸を繰り返す口、薄い唇から涎が零れていた。
 刺激が許容量を超えているのだろう。ミィは妖精の子供――だと思う。今まで性的快感など知らなかったのだ。さほどの許容量があるとも思えない。
 ミィの身体が絶頂に向かって上り詰めていくのが手に取るように分かる。
「ふあぁ。ああっ、マスター。わたし、もう駄目……」
 だが、カイムは素早く指を止めた。
 イク寸前まで持ち上げられ、再びイクことも出来ず刺激を止められる。それが苦痛であることは、ミィも理解していた。
「ますたぁ……」
 泣きそうな表情で見上げてくるミィ。
 えらく嗜虐心を刺激する姿であるが、出来るだけ平静を装って告げる。
「次はちゃんとイかせてあげるから」
「今度は、何する、の……?」
 不安げなミィの呟きを聞きながら、カイムは手の平を動かした。ミィの身体を起用にひっくり返す。前後が逆になり、背中の羽が天井を向く。
「え?」
 四枚の羽。ほんの微かに赤味を帯びた透明な羽。実体化した魔力の塊であり、背中から服を突き抜けている。
 滅多に触らせてはくれないが、触られるとくすぐったいらしい。
 カイムは左上の羽の縁を指で撫でた。
「ひっ!」
 ミィの口から漏れる声。四枚の羽がぴくりと跳ねてから、ぴんと立って硬直する。見た目は変わっていないが、羽の持つ雰囲気は変わっていた。
 出来上がった身体では、羽も十分な性感帯である。
 カイムは右上羽の中程を指で摘み、さするように動かした。
「ひぅ、ひぁ、ふぁ、あぁぁあ、マスター、羽は……羽は、ホントに駄目……!」
 今までの反応とは明らかに違う。指先に感じる妖精の羽。非常に薄く上質の絹のように滑らかな手触り。何度触っても飽きない心地よさ。
「そう言われると、もっと弄りたくなる」
 カイムは右手の人差し指と中指、中指と薬指で上の羽二枚を挟み込んだ。ミィの話では、羽は根元の方が敏感らしい。
「待って、マスター。お願い、待って……」
 次に来るだろう衝撃に、ミィが擦れた声で拒否を示す。
 だが無視して、根元から先端まで素早く指を動かした。
「ひゃぅ!」
 甘い悲鳴とともに、ミィが跳ねる。達したわけではないが、強い快感が身体を突き抜けたようだった。やはり羽への刺激は、反応が違う。
 にやりと笑い、カイムは三本の指で下羽二枚を挟んだ。同じように、根元から先端まで素早く扱いてやる。
「きゃン!」
 反応良好。
 カイムは同じ方法で、何度も羽を刺激する。
「きゃ、ふあぁ、ああっ! マスタぁぁ、ぅあっ、マスター……、遊ば、ふあぁ……! 遊ばない、ああっ、遊ばない、で、んんん……ぅあぁ、お願い、いぃ」
 それぞれ五回づつ扱いてから手を止める。
 くったりと脱力しているミィ。まるで芯が融けてしまったような身体。全身が赤く染まり、微かな汗を滲ませている。虚ろな表情のまま、何も言わずに荒い呼吸を繰り返していた。思考もほとんど働いていない。
 今なら軽くショーツの上から撫でるだけで達するだろう。
「さて、これで終わりかな」
 カイムは羽の付け根の間へと指を触れさせた。
「!」
 ミィが身体を硬直させる。
 羽の付け根の間。そこが妖精の弱点らしい。ミィは時々羽を触らせてくれることはあるが、羽の付け根は絶対に触らせない。頼んでも断られる。魔力の羽を作り出す部位なので、恐ろしく敏感なのだろう。
「マスター。駄目駄目、駄目……そこは、本当に――ふぁぁ……」
 指を動かすと、全身から力が抜ける。
 この部分を撫でられた妖精は、完全に脱力して動けなくなるらしい。どこかの本にそう書いてあったが、どうやら本当のようだった。
「ますたぁ、そこは、あぁぁぁ……だめ、んんん、駄目だ、から、ますたぁ。うあぁぁ、からだが融け、ちゃう……。やめて、やめてぇ……」
 ミィは指一本動かすことも出来ずに、刺激を甘受している。力の入らないまま必死に歯を噛み締めて耐えているが、そろそろ限界のようだった。許容量を超えた状態で達することが出来ず、意識が焼け付きかけている。
 カイムは背中から指を放した。
「ふぁ」
 息を吐き出すミィ。
 だが、休む暇は与えず、カイムは素早く三本の指で羽を挟んだ。二枚ではなく上下四枚をまとめて。直後の衝撃を本能的に察し、全身を引きつらせるミィ。
「あぅ、壊れる、かも……」
 そんな呟きを聞きながら、カイムは素早く指を動かした。
「きゃゥ!」
 枷が外れて、ミィが身体を仰け反らせる。何度もイク寸前まで持ち上げられたところへのトドメの刺激。全身の筋肉を収縮させて、性的絶頂を迎える。
 だが、それで終らせない。
 カイムは再び付け根の間に指を触れさせ、やや強くそこを擦り始めた。
「ひぃ! ひぁっぁ、はぅぅ、ふああぁ」
 ミィが止まることなく痙攣する。一度イって神経が敏感になった所で、もっとも敏感な部分を攻められているのだ。絶頂が収まらない。
「ああ、ああぅ、ふあぁ、マスター、壊れ、壊れる……壊れ、ちゃう!」
 意思とは関係なく身体を跳ねさせるミィ。
 全く力が入らず身体を硬直させて耐えることも出来ない。最も敏感な部分への攻めが圧倒的快感となって、無防備となった神経へと襲いかかる。
「もう、駄目……、あぁ、ますたぁ、マスタァ、ああああぁぁぁ……!」
 悲鳴のような声を上げながら、激しく痙攣するミィ。
 そこで、カイムは指を放した。ミィは左手の上でぐったりとしていた。時々思い出したように、ぴくりと身体を震わせている。
「大丈夫か?」
「うん。何とか……」
 カイムの問いに、ミィは擦れ声で答えた。

Back Top Next