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第28話 子猫再び


 灯りを消し、布団に入り眠る前。
 不意に胸に重さを感じ、目を開ける。
「こんばんは、ご主人様」
 胸の上にマキが乗っかっていた。光石の弱い明かりに照らされて、どこか怪しげな空気を纏っている。ゆったりと尻尾を左右に動かしながら、オーキを見下ろしている。
 既視感を覚えつつ、聞く。
「何してるんだ?」
「夜這いです!」
 ぐっと右手を握り、マキは得意げに主張した。
 オーキは何も言わぬまま左手でマキの肩を押える。続けて右手を背中に回し、金色のネジを掴んだ。ネジを逆向きに回すと一時停止するという仕様。
「あっ、待って、待って下さい!」
 オーキの右手を掴みながら、慌てて制止してくる。
「何というか、何て言えばいいんだ、これ?」
 とりあえずネジから手を話し、訊いてみた。昨日と同じような状況である。
 マキはにっこりと楽しそうに笑いながら、
「安心して下さい。とりあえす今回はお姉様の許可も取ってあります。お姉様は今日も一時停止してもらいました。はい。明日、お姉様のお掃除の半分をワタシがやるという取引なんですけど」
「許可って……」
 オーキは両手をマキの腋に差し込み、身体を持ち上げた。
 続いて自分の上体を起こし、マキを膝の上に下ろす。
 見ると、ベッド横の寝床の中でラセンが動かなくなっていた。睡眠ではなく、一時機能停止。オーキが大学に出掛けている間に、取引があったようだ。既にマキもラセンも納得しているらしい。後はオーキ自身がどう決めるかである。
「ダメですか?」
 マキが両手を胸元で握る。
 オーキはため息とともに応えた。
「わかったよ」
「ありがとうございます」
 マキがにっこりと笑う。
 カチ、とネジが鳴った。
 オーキはベッド横の小さなテーブルから術符を一枚取り出した。クリムに渡された消音の術符。手で破ると、目に見えない魔力が溢れる。
 一瞬部屋の音が消え、元に戻った。音を遮る簡易結界。
「いいか?」
 問われてマキが無言で頷く。
 オーキはマキの背に左手を回し、そっと抱き寄せた。マキが安心したように力を抜くのが分かる。そのまま頭に手を乗せ、猫をあやすように優しく手を動かした。
「ご主人様――」
 小さく呟き、マキが猫耳を伏せた。尻尾もへなりと布団の上に落ちる。
 頭を撫でていた手を、背中に移していく。猫の背を撫でるような感覚だった。背中や腰や足、軽くお腹を撫でてから、首元を指で優しく掻く。
「にぁ……」
 顎をくすぐられ、マキが猫のように目を細めていた。
 肩を支えているオーキの左手にもたれかかるように、背を逸らしている。白いエプロンを押し上げ存在を主張する胸の膨らみ。
 オーキはマキの喉元から手を離し、そっと胸を撫でた。
「!」
 目を開けるマキ。
 それから少し気恥ずかしそうに笑う。
「いいですよ。ご主人様のお好きなようにしてもらって」
「なら遠慮無く」
 苦笑いをしてから、オーキはマキの胸に手を合わせた。その形を確認するように、丁寧に手を動かす。丸い膨らみと、手の平に返ってくる弾力。
「大きいな」
「へへ。自慢なんですよ。ワタシの胸」
 頬を赤くしながら、マキは片目を閉じた。
 服の上からでも微かに分かる、胸の先端の突起。そこを親指の腹で擦ってみる。
「んっ」
 小さく肩が跳ねる。
 オーキは肩に添えていた左手を離した。
 それから両手をマキのエプロンの下に差し込む。人形のように小さな身体と、身体の割に大きな胸。紺色の生地の上から、形を確かめるように手を動かした。
 指の動きに合わせて、乳房が形を変える。
「ん……ふぁ……」
 片目を閉じ、マキが猫耳を伏せた。身体を捻りながら、小さく息を漏らしている。指先に感じる柔らかさと暖かさ。大きさ以外は人間と変わらないだろう手触りだった。
 擦れた呼吸とともに、マキが見上げてくる。
「あっ、ご主人様。胸ばっかり……んっ、それに、手付きがえっちですよ」
「好きにしていいって言っただろ?」
 笑いながら、オーキは胸の先の突起を服の上から軽く摘んだ。
「んっ!」
 両目を閉じ、肩を跳ねさせる。頬が赤く染まっていた。
 そのまま親指と人差し指を動かし、こねるように乳首を攻める。
「あぅ……ふぁ、ぁっ……ご主人、まさ……」
 身体を捩り、マキは甘い吐息を漏らしていた。
 オーキは一度胸から手を放し、マキの頭を撫でる。気持ちを落ち着かせるように。やや癖のある黒い髪の毛。白いヘッドドレス。伏せられた猫耳。
「ご主人様?」
 溶けたような目を向けてくるマキ。
 オーキは左手でマキの背中を抱えた。続けてお尻の下に右手を差し込み、腰を腕に乗せる。腕に腰掛けた体勢のマキを、抱え上げる。視線が同じ高さになるように。
「キス、するぞ?」
「はい」
 頬を染め、恥ずかしそうに頷く。
 息を吸いオーキはマキの唇に自分の唇を重ねた。薄く小さな唇。お互いの存在を確認するような淡い口付けだった。
 尻尾がオーキの腕に巻き付いてくる。
「ふぁ」
 唇を放し、マキが笑う。
「ご主人様、積極的ですね」
 オーキは苦笑いだけを返した。
 眉を内側に傾け、マキが頷く。
「でもワタシだって負けてられませんよ」
 そう言って背中に手を回し、ボタンを外していった。

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13/10/24