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第27話 朝が来て |
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カーテンの隙間から差し込む朝の光。 「ん?」 オーキは目を開けた。 静かな部屋に違和感を覚える。 「そうか」 その理由を思い出し、オーキは身体を起こした。 ラセンが起きていない。ラセンはいつもオーキより早く起きている。しかし、今日は起きていない。それが違和感の正体だった。 ベッドの横に置いてある寝床を見ると、うつ伏せのままラセンが眠っている。いや、止まっている。横の寝床ではマキが同じように止まっていた。 オーキはベッドから起き上がり、ラセンを抱え上げる。 力の抜けた人形のような身体を膝に乗せ、左手で身体を支えた。金属が入っているため、見掛けよりも重い身体。背中のネジを右手で掴み、回す。硬い手応えと金属音とともに、ゼンマイガ巻かれた。 数秒して。 「んぁ……?」 ラセンが目を開けた。 寝ぼけたような顔で視線を動かしてから、オーキの顔を見上げる。 「もう朝か……。お前より起きるのが遅いとは不覚だな。疲れていたのか?」 尻尾を伏せ、ラセンは小さく呻いた。早起きは小さな自慢らしい。オーキよりも遅く起きたことが気に入らないようだった。 寝床に横になっているマキに、オーキは人差し指を向ける。 「マキがゼンマイ止めたとか言ってた」 「どういうことだ?」 眉を寄せるラセン。顔に浮かぶ緊張の色。自分が寝ている間に身体に何かされることは、お世辞にも気持ちのいいこととはいえない。 背中のネジに手を触れ、説明する。 「背中のネジ逆に回すと一時的に機能停止するんだと。昨日の夜に、マキが止めたらしい。実際止まるみたいだ。お前も止まってたし、マキも止まったし」 「は?」 ラセンが瞬きをする。 オーキはラセンを横に置いてから、寝床のマキを抱え上げた。重さはラセンと同じくらい。身長はやや低い。ただ、身体の凹凸は大きい。 背中のネジに手を掛け、ラセンと同じように回す。 「んー?」 マキが目を開けた。寝起きのような焦点の合っていない瞳を動かし、 「あっ、ご主人様!」 オーキを見上げて驚きの声を上げる。 さらに首を動かし周囲を見てから、 「て、朝? 朝なんですか!」 夜、オーキの所にやって来たが、ネジを逆に回され一時機能停止になった。そして意識を取り戻すと朝である。あれから朝まで完全に放置されていた。その事実に驚いているようだった。止めてもまた動かして、マキとの一夜を過ごすと考えていたのかもしれない。 「おい、マキ」 ベッドに立ったまま、ラセンが唸る。両手を腰に当て、赤い瞳をマキに向けていた。 「あ。お姉様、おはようございます」 オーキの膝に乗ったまま、マキが挨拶をする。 だが、ラセンは静かに眉を傾けていた。オーキを指差し、 「こいつから、昨日の夜にアタシのネジを止めたと言われたんだが、どういうことだ? 言い訳の内容によっては、少し痛い目を見て貰うぞ?」 すっと目を細める。赤い瞳に映る刃物のような光。口元から除く牙のような犬歯。威嚇する子犬のような迫力があった。 「えっと……」 気まずそうに猫耳を伏せ、マキは目を逸らした。尻尾を不安げに揺らし、オーキの寝間着を掴む手に力を入れる。今更ながらまずい事をしたと気付いたようだ。 そして、言い訳しても無駄だと考えたのだろう。素直に頭を下げる。 「ご主人様に夜這いをかけたのですが、お姉様に気付かれるとマズいと思ったので、止めちゃえと思ってネジ止めました。すみません……」 「どこから何言っていいか分からんが――」 肩を落とし、ラセンがジト目でマキを睨んだ。 「夜這いって、お前……」 怒る気力も失せたようである。 カーテンの隙間から差し込む朝の光。カーテンを開けたいのだが、膝の上にマキが座っているため、立ち上がれない。 顔を上げ、マキはぴんと猫耳を立てる。頬を赤く染め、目を輝かせながら、 「ワタシもそういう事に興味ある女の子なんです。まだ男性と身体を重ねたことはないですし、せっかくですからご主人様との深厚を深めるのも兼ねてと思ったのですが、なぜかワタシのネジ止められてしまいました……ぅぅ」 と、肩を落とす。本気で言っているようだった。 だが、すぐに顔を上げ、ラセンを見つめた。 「あっ。もしかして、お姉様も一緒にご主人様と一夜を共にしたかったのですか!」 「違う!」 即座に言い返すラセン。 腕を組み、大きくため息を付く。 「まったく、お前も大概な性格しているな」 「あっ、ひどいです。お姉様」 少し傷ついたような声音で、マキが言い返した。 |
13/10/17 |