Index Top 第9話 短編・凉子と浩介 |
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第2章 重なり合って |
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柔らかな唇の感触、舌に絡み付いてくる唾液。 「んっ……ん」 凉子の舌が浩介の口の中に入り込んでくる。自分の感覚と繋がっていない、他人の部位。それが生々しく絡み付いてくる。 「ふぁ……」 喉から漏れる声。 「ふふ」 浩介から口を離し、凉子が舌で自分の唇を舐めた。頬を赤く染め、目蓋を下げて浩介を見つめている。酷く色っぽい姿だった。 凉子の手が頬に触れる。やや冷たい指先。 頬から首、首から胸元に移動していた。 「やっぱり浩介くんの胸は大きいね」 寝間着の上から、形をなぞるように手を動かす。凉子の指の動きに合わせて、乳房が形を変えていた。自分で触るのとはまるで違う、他人に触られる感触。 尻尾を揺らしながら凉子が手を動かす。 指先で乳首を擦るように。服越しに小さな痺れが胸の奥に伝わっていく。 「ん……」 浩介は小さく声を漏らした。頬が赤く染まっている。 優しく指を動かしながら、凉子が笑う。 「気持ちいい?」 「くすぐったい……」 何と言っていいのか分からず、浩介は思った事を口にした。服越しに動く手に、胸の膨らみが形を変えている。 凉子が艶っぽい微笑を浮かべた。 浩介の手を取り、自分の胸に当てる。 「私の胸も触ってみて」 丸く柔らかい乳房。手に触れるのは寝間着の生地だが、その奥にある柔らかさもはっきりと伝わってくる。自分ではない女の子の胸に手を触れているという非現実。 浩介は唾を飲み込んだ。心臓の鼓動が頭の芯まで響いている。 「ふふ……」 凉子が楽しそうに目を細めていた。 凉子の胸の形を確かめるように、ゆっくりと手を動かす。手の神経が痺れるような感覚があった。指に力を入れると、柔らかな弾力が返ってくる。 「柔らかい……」 思わず呟く浩介。 「女の子だもん、私も浩介くんもね?」 そう言いながら、凉子が浩介の身体に手を回した。浩介に胸を押し付けるように。弾力のある肉の潰れる感触に、浩介は呼吸を止める。 凉子が口元を緩めた。 身体を離し、凉子がボタンを外していく。白と黒の市松模様のパジャマを脱ぎ、リビングテーブルに放り捨てた。白黒チェック模様のブラジャーが露わになる。 蛍光灯の明かりに照らされた白い肌。身体は細いものの、しっかりと筋肉は付いている。かなり鍛えているのははっきりとわかった。 「それにね」 黒い尻尾を揺らしながら、凉子が浩介のボタンを外していく。 妙に慣れた手付きでボタンが外れた。凉子が袖を引っ張り寝間着を脱がしていく。浩介は対抗することもなく、凉子の手を受け入れた。 脱がれた上着を、凉子がテーブルに乗せる。 タンクトップ型の就寝用ブラジャーだけの上半身。部屋の冷たい空気が肌に触れた。しかし、身体は暑いと思えるほどの熱を帯びている。 「やっぱり、私とはちょっと違うね」 浩介の肩に触れながら、凉子が頷いた。 肩から首筋、お腹や脇腹へと手が伸びていく。 「ん……」 目を逸らし、浩介は息を漏らした。ただ触られているだけだというのに、身体の芯へと痺れるような感覚が染み込んでいく。 その反応に凉子が満足げに頷いている。 「胸だけじゃなくて、お腹とか背中とか、腕も男の子とは違うでしょう?」 両腕で浩介を抱きしめる。 何も言わぬまま、浩介は凉子の身体を抱きしめた。肌に伝わってくる滑らかな肌の感触。自分の身体ではない柔らかさと体温だ。 凉子の手の動きを真似るように背中や脇腹を撫でる。他人と直接肌を触れあわせている奇妙な安心感。凉子の呼吸と心音が聴覚に直接伝わってくるのが分かった。 自分の心臓の鼓動も大きくなっていくのが分かる。 「んんっ!」 首筋を走る痺れに、浩介は息を止めた。尻尾が跳ねる。 凉子の手が浩介の狐耳を摘んでいた。頭から生えた狐の耳。人間にはない部分のためか、かなり敏感である。 「やっぱり、耳は効くで――にっ」 猫耳を摘まれ、凉子は短く声を上げた。短く細かい毛に覆われた三角の獣耳。それは獣族である証明らしい。元々かなり敏感な部分のようだった。 凉子が浩介の狐耳を両手で掴み、こねるように動かしている。 それと同じように浩介は凉子の猫耳を 「うぅ……」 「ひっ……」 軽く歯を食い縛り、浩介は凉子を見つめた。 目元に薄く涙を浮かべ、凉子も浩介を見つめている。 喉の奥が熱い。 「ふふ……」 凉子が笑いながら右手を移す。頭から首筋を撫で、背中、腰へと。左手は肌を伝わっていく細い手。そして、ぱたぱたと跳ねる尻尾を捕まえる。 「うん……!」 尻尾から伝わってきた衝撃に、浩介は肩を跳ねさせた。凉子の手が指が、狐色の毛を撫で、芯をまさぐる。背骨を駆け上がる痺れに、身体が言う事をきかない。 「ん……」 目を瞑り、背中を丸める。喉の奥が引きつるような感覚に、呼吸すらままならない。両腕で凉子に抱きつきながら、浩介は声を吐き出した。 「尻尾は……」 「気持ちいいでしょ?」 楽しそうに凉子が呟く。 狐耳と尻尾から全身に走る痺れに震えつつも、浩介は無言で腕を下ろす。腰の後ろでうねうねと動いている尻尾。それを右手で掴んだ。 凉子の肩が破ね、手の動きが止まる。 浩介は力の入らない右手で尻尾を握り締め、尻尾の付け根を指で押す。 「にぃぃぃ……そこ、だめ……」 掠れた声を漏らす凉子。猫神であるためか、尻尾の付け根が弱点のようだった。少し力を込めてくすぐるように指を動かす。 「んぃぃ……」 喉を震わせながら、凉子が手の動きを再開した。人差し指と親指で狐耳を揉みながら、右手で尻尾をしごく。人間にはない器官から作られる、人間では感じる事のない快感。 お互いに尻尾と狐耳を弄りあってから。 どちらとなく動きを止める。 浩介は片目蓋を下ろした。身体中が熱を帯びている。のぼせたかのように意識が朦朧としていた。思考がかなり重い。呼吸の音や心臓の鼓動が身体の奥に響いている。 凉子が浩介のズボンの中に手を差し入れた。 「ん」 ショーツの上から秘部を撫でられ、小さく声を漏らす。 「私のもね?」 凉子が浩介の手を掴み、自分のズボンの中に入れた。指先が脚の付け根に触れる。木綿の生地の感触と、指先に感じる凹凸。そして、湿り気。 「ん……」 猫耳を動かし、凉子が片目を閉じる。 「気持ちいい……」 「………」 下腹部から身体中に広がっていく甘い波紋。 焼けるような快感ではない。だが、深い快感が身体の奥まで染み込んでいく。今までに感じたことのない心地よさに、浩介は意識が融けていくような錯覚を覚えていた。 「へへ……」 凉子が背中に手を回す。抱きしめるように。 浩介は凉子の髪の毛を撫でた。少し癖の付いた黒髪。女性特有の丸みを帯びた体付きと、柔らかく弾力のある肌。その形を確かめるように手を沿わせていく。 「ん……」 どちらからとなく唇を重ねた。 既に思考はまともに動いていない。浩介は凉子と抱き合いながら舌を絡ませ、お互いの秘部を撫でる。焼け付くような快感はない。しかし、強烈な絶頂感とは違う融けるような一体感があった。 男だった時は想像もしなかった不思議な快感。 数分か、十数分か。 浩介の唇から、ゆっくりと凉子が口を放す。 「どう?」 「まあ……」 目を逸らしながら、浩介はそれだけ呟いた。 |
12/11/16 |