Index Top 第7話 夏の思い出? |
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第14章 眠れない…… |
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手の平に触れる丸い感触。男にはない胸の膨らみ。 自分が女になってしまったのだと、改めて思い知らされる。指で押してみると、柔らかさと弾力が同時に返ってくる。浩介は自分の両手で胸を覆い、その手をそっと動かした。ゆっくりと撫で、時々両手で掴むように。 「ん……」 細い息が漏れる。 暗い部屋にその音は妙に大きく響いた。 撫でている感触も、撫でられている感触も自分のもの。人間の男として生きていた中では、女の胸を触るということもなかった。 男の身体にはない、丸い膨らみ。撫でているだけで、じんわりと胸が熱くなった。 その膨らみの上にある突起が、つんと起つような感覚を覚える。指の腹でそっと触れてみると、小さく痺れるような衝撃が背筋を駆け抜けた。 「んッ……」 狐耳が動き、尻尾が跳ねる。 無言のまま浩介は右手を下に移動させた。 薄手のズボンの中に右手を入れ、股間をそっと撫でる。 股間を覆っているのは薄い草色のショーツ。足の付け根とお尻を微かに締め付けるゴムの感触。クロッチの上から両足の間に触れるが、そこには何も生えていない。男のような外に出た生殖器はなく、なだらかな手触りだった。 それでも、指先で女性の微かな凹凸は感じられる。 「はぁ……」 何もない秘部をショーツの上から撫でながら、浩介は吐息を漏らした。 指で触れているだけで、下腹の奥の方から――おそらくは子宮の辺りから、温かな熱が広がっていく。胸の奥が熱い。胃の辺りから何かがこみ上げてくるような圧迫感に、息が苦しくなっていた。喉が渇いている。 「ぅ……ん……」 浩介は両足を摺り合わせた。狐耳が伏せられ、尻尾が意識とは別に動いている。 自分が男であるという自我はあるし、男に変化することもできるが、身体は紛れもなく女だ。それは分かっているし、十分に理解している。 だが、何か受け入れられない部分もあった。 ズボンの中に入れていた右手を出し、その手を頭に伸ばした。 狐色の髪の毛と、頭から生えた狐耳。右手でそっと狐耳を摘んでみる。 「ンっ」 ぴくと狐耳が動いた。 指で触れてみると、意外と硬いことが分かる。人間の耳より多少硬い程度だが。髪の毛とは毛質の違う、細く柔らかい毛に覆われた三角形の耳。先端が黒で、内側が白い。 どこか作り物を思わせる狐耳。それでも、うっすらとした温かさがあり、触られているという感覚もあった。右前腕の内側が引きつっている。 「人間でもなくなってるからな……」 両手で狐耳を弄りながら、浩介は囁くように独りごちた。 人間には存在しない器官の感触に、ある程度は慣れたももの、やはり意識して触ってみると強い違和感があった。 「うぅ……ん……」 喉を引きつらせつつ、両目を閉じ、背中を丸める。 狐耳を弄るたびに、頭から首筋を通り背中まで、ぴりぴりと引きつるような痺れが走っていた。くすぐったいようなこそばゆいような、淡く甘酸っぱい刺激。だが、決して不快なものではなく、病み付きになるようなもの。 左手で狐耳を触りながら、浩介は寝返りを打った。仰向けから横向きへと。 右手を後ろへと回し、ぱたぱたと勝手に動いている尻尾を右手で軽く掴む。 「んんッ!」 悪寒に似た何かが、尻尾の付け根から背中を一気に駆け抜けていった。尻尾の毛が爆ぜるように逆立ち、呼吸が止まる。やはり尻尾は敏感な部分だった。 尻尾を握ったまま、浩介は右手を動かす。 「ん……ぁ……」 喉から悩ましげな声がこぼれていた。若い女の甘い声。それは自分で出している声だというのに、他人の声のようで妙な興奮を覚える。 「ン……。俺の尻尾……」 髪の毛よりも毛質が硬い尻尾の毛。手の動きから逃げるように自分の意志とは別に尻尾が動いているが、それを抑えるように手を動かしていく。尻尾から背中を通り、両手両足や頭まで、甘い痺れが駆け抜けていた。 尻尾を撫でている右手からも、神経に染みるような痺れが腕を駆け上がっている。 「あっ……。ンぅ……」 噛み締めた歯の間から、声が漏れる。 浩介は右手で尻尾をしごきながら、左手で狐耳を弄っていた。眉根を寄せ唇を噛み、人外の感覚に耐える。人間にはない器官から、人間には存在しない感覚が全身へと波紋のように響いていた。首筋の産毛が逆立つ。横隔膜が痙攣し、上手く呼吸ができない。 だが、手が止まらない。 「く……」 背中を丸めながら、神経に染み込む感覚に身震いする。尻尾の先端が、痙攣するように跳ねていた。手足の筋肉に引きつるような力が入る。 浩介は左手の指を狐耳の奥へと差し入れた。 稲妻が、散る。 「……ッ! あ、ふああッ!」 丸まっていた身体を、弾けるように仰け反らせた。今までとは違う感電したような衝撃が全身を貫く。見開いた視界に見える白い火花。 二、三度身体を震わせてから、浩介は両手で自分の身体を抱きしめた。 「熱い……」 火照った身体に、冷房の効いた部屋の空気が心地よい。 左手がパジャマの中に潜り込む。 丸く柔らかい胸の膨らみを、下着の上からゆっくりと揉むように手が動いている。それは自分の意志ではないような動きだった。それでも、とめどなく湧き上がる快感を貪るように、自分の身体をまさぐる。 左手で胸を触りながら、右手をズボンの中へと差し入れた。 「んっ、ぁ……」 ショーツの生地の上から、秘部を人差し指で縦になぞる。その動きを拒否するかのように太股が閉じられるが、それは無意味だった。指の動きに合わせて、下腹から喉まで突き上がるような衝撃が走り、寒気のような痺れに背中が粟立つ。 「ふぁ……、くっ、うぅ……」 快感に耐えるように、浩介は再び背中を丸めた。 生地の上からでも淫核が勃っているのが分かる。右手の指先で小さな突起を丁寧に擦りながら、左手で胸を掴んだ。ブラジャーの上から手の平で丸い膨らみを押し潰し、親指と人差し指で硬くなった乳首を摘んで、転がすように弄る。 「あっ、ぅぅ、くぅ……!」 喉から漏れてくる声を必死に押さえ込む。大声で喘ぎたいという衝動に駆られるが、理性がそれを押し込んでいた。噛み締めた奥歯が、少し痛い。 浩介は胸と秘部を弄る手の動きを少し速くした。 快感が上り詰めていくのが分かる。 「あッ! うぁ、は……ぁ……!」 うずくまるように両足を持ち上げ、背中を丸め、身体を貫く快感を甘受する。女の絶頂は男の射精のように一回では終わらない。また、男とはかなり強さも違うし、種類もあるようだった。 身体の芯まで届くような、深い快感を味わいつつ、浩介は左手を胸から放した。まだ身体が終わりではないと告げている。その衝動を拒否する理性は残っていない。 頭の上で震えている三角の狐耳を摘む。 「ン!」 浩介は息を呑み込み、両目を見開いた。目元から涙がこぼれる。 酷く喉が渇いていた。胸の奥が焼け付くように熱い。だが、身体は止まらずに動き続ける。右手でショーツの上から淫核を摘みながら、左手で狐耳を無遠慮に弄った。どちらも自分の身体なのだから、遠慮する理由もないだろう。 「はッ、は、はぁ……あっ、クッ……」 下腹から横隔膜を突き上げるような衝撃と、狐耳から首筋を通り爪先まで駆け抜けていく痺れ。上下からの快感に、尻尾が大きく動き、手足が痙攣している。 さきほどから絶頂感が続いていた。 「んんッ、やっぱり……女は、ふぁ……、男とは違うッ……。くぅ……あっ」 どこか冷静な部分でそんなことを噛み締めながら、浩介は秘部を弄っていた右手をズボンから引き抜いた。横向きからうつ伏せに姿勢を変え、腰の後ろでぱたぱたと跳ねている尻尾をぎゅっと掴む。 「ンン……!」 枕に顔を埋め、浩介は声にならない声を上げた。 甘い電撃に手足が痙攣して、まともに言うことを聞かない。それでも、狐耳と尻尾を弄る手の動きは止まらなかった。狐耳の中に左手の指を差し入れ、右手で尻尾の付け根の裏側を引っ掻く。 「う……ンン……!」 うつ伏せのまま枕に顔を埋め、浩介は体内を駆けめぐる快感に身悶えする。 電撃のように強い快感。既に達しているというのに、身体の疼きが収まらない。狐耳と尻尾を嬲る手を止めることができない。それどころか、自分の理解できない領域へと快感が上昇していく。 何かが、弾けた。 「―――ッ! ―――ゥッッ! ――ァァァ……ッ!」 枕に噛み付き、喉の奥から吹き出した声を無理矢理呑み込む。感電したような衝撃に、全身の筋肉が強張った。見開かれた両目から涙がこぼれる。暗い部屋に散る白い稲妻のような火花。辛うじて残った思考で、自分が一番大きな絶頂に達したことを理解した。 「ああぁ……っ、ぁぁ……」 力の抜けた顎。喉から、絶叫の終わりが吐息となって漏れてる。 人間の男だったときには想像すらしなかった強い絶頂。身体を貫く快感に加えて、精神が満たされるような満足感をも同時に覚える。それは、何とも表現しがたいものだった。 「う……ん、っ……」 狐耳と尻尾から手を放し、浩介は再び枕に顔を埋めた。 力の抜けた手足と、萎れたように垂れた狐耳と尻尾。マラソンした後のように重い疲労が、全身にのしかかってくる。しばらくは動けないだろう。 「多分……狐神の女でも、こんな感覚は無いだろうな……」 深い呼吸を繰り返しながら、浩介は目を閉じた。 この身体は異常なまでの快感を生み出す。人間や狐神の女でもこれほど過剰に感じることはないだろう。作り物の身体だからかもしれない。 「疲れた……」 何にしろ、この身体が作る快感は体力精神力を酷く消耗させる。 |