Index Top 第5章 戦争が始まる

第8節 限界を超えて


 三号機が全身からビームブレードを出し、飛びかかってきた。
 レイは、テンペストをバズーカ砲のように構えると。
「レーヴァティン!」
 閃光が――
 三号機の胸を貫いた。空間そのものを突き抜けて、純白のプラズマビームが伸びていく。この超極熱の前には、いかなる物質も耐えられない。それが、たとえオリハルコンでできていたとしてもだ。
 ただし、砲身に過度の付加がかかるため、連続しては二発しか撃てない。
 胸のコアを蒸発させられ、三号機の機能が停止する。動きが止まり、ビームブレードが消えた。穴の開いたその胸を蹴り、レイは真上へと跳び上がる。
「まず、一体」
 破損した関節は修復しつつあった。
 砲身が収まり、テンペストが剣へと戻る。チェーンブレードが起動し。
 柄を握って、レイは足を振って身体を回転させた。上下から鋏のように繰り出された二本の剣をテンペストで弾く。敵の剣にもチェーンブレードが仕込まれていた。材質もオリハルコンだろう。
「十三剣技・十連牙!」
 連続で剣を振るが、斬撃も突撃も二本の剣で防がれた。防御面では敵に分がある。しかし、武器の長さは自分に分があった。そこから導き出される攻撃は――
「六雷光!」
 片手突きが、六号機を向かいの廊下へと叩き込む。
 しかし、それを見届けている余裕はない。四号機が動いていた。両手を開き、指先からさきほどのような長さのビームソードを出している。数は十本。それが、左右から閉じるように迫ってきた。
(剣では防げない)
 レイは再びテンペストを担いだ。
 柄が割れ、口径三十ミリの砲身と引き金が現れる。
「ブリューナグ!」
 壮絶な電磁力で、猛回転と音速の何倍もの速度を与えられた超比重金属弾が、立て続けに四号機の身体に命中した。ジャンボジェット機をも撃ち落せるその貫通力は、オメガの装甲だろうと耐えられない。
 四号機はばらばらに砕け、ビルの壁を突き破って粉塵の中に消える。
「二体目……」
 呟きながら、レイは周囲を見回した。ブリューナグを撃った反動で、身体は上に飛んでいく。残りは五号機、六号機、スティル。だが、五号機と六号機の姿が見られない。
 スティルは――
「ランス・クラッシャー!」
 ロンギヌスを構え、真正面から飛んでくる。
 レイは相手の顔面に狙いを定めて、引き金を引いた。
「プログラム・インビンジブル――起動!」
 超比重金属弾が、スティルを弾き飛ばす。しかし。
「当たってない!」
 跳ね返った五発の弾丸がビルを粉砕しながら、どこかに飛んでいった。しかし、スティルに弾丸は当たっていない。身体に触れる一ミリ前で、跳ね返ったのである。
「斥力フィールドか」
 呻いて、レイはテンペストの上下を入れ替えた。噂には聞いたことがあるが、見るのは初めてである。斥力で、質量のあるものを押し返す障壁。距離が近くなるほど、斥力は強くなる。質量のある攻撃は通じない。
 ならば、質量皆無の武器を使うまで。
「レーヴァティン!」
「ダイヤモンドダスト!」
 撃ち出されたプラズマビームは、スティルの身体から吹き出した銀色の霧に触れて、いくつにも別れてビルを貫いていく。スティルには当たっていない。銀色の霧が複雑な電磁場を作り出し、プラズマビームを分散させたのだ。
「うぬぼれるな……は、撤回する」
 スティルの防御は完璧と言っていい。質量のある武器は、斥力フィールドで跳ね返される。電荷を帯びた粒子兵器も通じない。光学兵器対策もしてあるだろう。
 武器のロンギヌスも、洒落にならない。
「こんな狭くて不安定な場所じゃ戦えない」
 レイは跳んだ。吹き抜けの壁面を蹴りながら、上へと登っていく。戦うには、広くて平坦な場所でなければならない。その条件を満たすのは、屋上。
 スティルが追ってくる。
 姿を見せないオメガを警戒しながら、レイは上へと跳んでいく。
 やがて、屋上に出た。コンクリートの床に着地する。
 スティルは、吹き抜けを挟んだ反対側に着地した。
 それに続いて、屋上の床を突き破り、吹き抜けの左右に五号機と六号機が現れる。
「ここからが、本番だな……」
 レイは敵を見やった。鉄壁の防御と、テンペストを超える武器を持つスティル。レーザーを放つ五号機。オリハルコンの剣二本を自在に操る六号機。
 厄介な相手が残ってしまった。
 だが、自分はこの二体と一人を倒さなければならない。
 レイはテンペストを構えた。
「起動率一二〇〇パーセント!」

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13/8/4