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終章 一件落着?

「よし」
 ツクモは制服の襟を軽く引っ張った。
 それほど苦労なく、元の身体に戻ることはできた。
「提督、こちらは完了しました」
 ベッドに寝かせてある扶桑と、その横にいる山城。
 とりあえずおかしな部分が無いように、部屋や浴室を片付け、扶桑の身だしなみを整えて、ツクモは自分の身体に戻った。問題は無いはずである。
 ちらりと時計を見ると、現在時刻午前十一時。
「…………」
 ツクモは視線で山城に合図を送る。
 山城は頷いてから、扶桑の身体を揺すった。
「姉さま、姉さま起きてください。もうお昼ですよ」
「…………」
 扶桑は手を持ち上げ、光から逃れるように顔に乗せる。
 数秒してから手をどかし、ゆっくりと眼を開いた。大きく息を吸い込んでから、身体を起こし、部屋を見回す。隣にいる山城、壁に背を預けて起っているツクモ。窓の外は、既に昼の明るさになっていた。
「おはようございます、提督」
 ツクモに向かって挨拶をしてから、山城に向き直る。
「おはよう、山城」
「おはようございます、姉さま。……もう昼ですけど」
 笑顔で山城が答える。
 ツクモは壁から背を離して、笑ってみせた。
「気持ちよさそうにぐっすり寝てたから、起こすのは気が引けてな」
「そうですか……」
 扶桑は頷き、ベッドから立ち上がった。
 部屋を横切りタンスの前へと移動する。
「?」
 行動の意味が分からず、ツクモと山城は疑問符を浮かべた。
「ところで……山城、提督――」
 そう言いながら振り返った扶桑は、長匕首を一本抱えていた。酷く楽しそうに微笑みながら、白樫の鞘から刀身を抜き放つ。
「私に、何をしました?」
 銀色の刃が、白く輝いた。
「!」
 ツクモと山城は言葉もなく。
 その場に膝をつき、しめやかに土下座した。

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18/8/19