Index Top 第3話 ルクの空腹

エピローグ


 ルクの身体でべたべたになった身体を洗い、台所へと戻る。
「どうだ?」
 寝間着姿のまま、ルクを見る。
 元の形状に戻ったルクが、食器の片付けをしていた。
「もう大丈夫でス。どこにも問題ありまセン」
 左手を動かしながら、そう言ってくる。
 半分溶けた状態からとりあえず人型に戻り、身体を再構成したようだった。左手はどこも問題なく繋がっている。握って開いてみても、その動きに支障はない。
「ご主人サマの精液取り込んだラ、最近固まり悪かったのも直りましタ。人間の情報の再装填は無事に成功したようデす」
 一度左手を液状にしてから、再び手の形に戻してみせる。人間の情報を取り込んだおかげで、液化と固化の切り替えがやりやすくなったらしい。
 予想以上の速効性だった。
「それはよかったな」
 サジムは椅子に座って、近くに置いてあったコップを手に取る。中身は普通の水。
 中の水を二口飲んでから、一度コップを置く。
 流しから取り出した皿を、布巾で拭きながら、ルクが緑色の目を向けてくる。
「では、ご主人サマ。また、ワタシの固まりが悪くなってきタラ、その時はさっきみたいにワタシを抱いて下さいネ?」
「分かってるって」
 適当に手を振って、サジムは頷いた。
 ふとルクが皿を拭く手を止める。
「……? 以前だったラ、こういう時は拒否してましたケド」
「あー」
 サジムは呻いた。
 血を呑ませるから身体を重ねるのは拒否。以前ならそのような態度を取っただろう。ルクもそこを疑問に思ったようだった。
 吐息してから、コップの水を全部飲み干す。
 窓の外の夜の闇に目を移し、サジムは小さく呟いた。
「やっぱり、ぼくもむっつりスケベか……」

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