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憑き蟲の復讐代行 エピローグ


 裕樹のアパートにて俺はカップメンを食っていた。
 気絶した江美の記憶を弄り全部なかったことにする。それから片付けを済ませてから、早々に帰宅。自殺を考えていただけあって、部屋はきれいに掃除してあった。
 インターホンもなく、玄関が開く。
 振り向くと、男が部屋に入ってきた。
 見た目五十過ぎのがっしりした男。短い黒髪に白髪が少し混じっている。黒い着物と袴に、白い羽織という格好。腰には小太刀を一本差していた。
 箸を止め、俺は訊いてみる。
「……死神さんでしょうか?」
「そうだ」
 死神は答えた。
 腕組みをしてから、感慨もなく続ける。
「裕樹はもう逝ったよ。この世に未練はないと言っていた。気の早いヤツだ。今度生まれてくる時は、もう少し賢い人間に生まれてくればいいな」
 死神が死者に情をかけることは少ない。死んでしまった人間は生き返ることもないし、人生をやり直す機会もない。同情しても何も変わらない。
 俺が黙ってるうちに、つらつらと続けた。
「江美とかいう女に何かしたようだが、殺してないなら不問とするらしい。後はお前の好きにしろ。私が口出しするようなことでもない」
 そう言うなり、部屋を出て行く。そろそろ明け方になるのだ。おそらくは一睡もしてないだろう。人間に比べて頑丈とはいっても、やはり徹夜は疲れる。
 俺は黙ってそれを見送った。

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