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エピローグ


「ねえ、マスター。どうだった?」
 身体をハンカチで包んだミィが、ベッドテーブルから見上げてくる。三角帽子とワンピース、ショーツは畳んであった。後で洗濯しておくべきだろう。
 妖精だから、と言うべきだろうか。
 ミィは気絶寸前まで行っても立ち直るのは早かった。
「どうって?」
 苦笑いとともに訊き返す。
「わたしの身体、気持ちよかった?」
「と言われても、気持ちいいのはミィだけでしょ」
 カイムは人差し指でミィの頭を撫でた。
 ミィの身体を好き勝手弄っているとはいえ、それで気持ちよくなっているのはミィだけである。カイム自身はこれといって快感を味わっているわけではなかった。
「そういえば……」
 指で頬をかきながら、ミィは頷く。
「でも、ミィはどうなんだ? 結構無理してると思うけど」
 ミィの乱れる様子を思い返しながら、カイムは尋ねてみた。本来なら適当な所で留めておくべきなのだろう。だが、カイムも自制心が維持できず、ミィが壊れるかと思うほど強く攻めてしまう。
 しかし、ミィは気楽に笑ってみせた。
「わたし、こう見えても丈夫だから。壊れるくらい弄って貰わないと歯応えないよ。だから、マスターも遠慮しないでね?」
 と、ウインク。
 ため息をついてから、カイムは額を押さえた。変なことに興味を持ってしまったとは思っていたが、どうやらもう戻れない所まで来てしまったらしい。
「分かったよ。じゃあ、今度からぼくに弄って欲しい時はそう言ってくれ。壊れるって思うくらい可愛がってあげるよ。もう矯正するの無理そうだしね……」
「ふふ……」
 その台詞に、ミィは満足そうに笑う。
 そして、身体に巻き付けていたハンカチを外した。一糸まとわぬ姿のまま、羽を動かし飛び上がる。細くきれいな子供のような身体が、カイムの目の高さまで移動した。
 赤い髪と赤い瞳。華奢な手足と、透き通った白い肌。凹凸の少ない子供のような身体だが、微かに胸は膨らんでいる。秘部には産毛も生えていない。背中には微かな赤みを帯びた透明な四枚の羽が生えている。精巧な人形を思わせる、妖精の身体。
「ねぇ、マスター。わたしの事好き?」
 両手を広げて、唐突にそんなことを言ってくる。どういう意味で言っているのかは分からない。楽しそうな光を灯した赤い瞳から、考えを読むことはできなかった。
「いきなり何を? 好きって言われれば、好きだけど」
 曖昧にそう答える。気の利いた答えではないという自覚はあった。こういう時に的確な答えを返せるほど、カイムは場慣れしているわけでもない。
 しかし、ミィはその返答を気にすることもなく、
「わたしは、マスターのこと大好きだから」
 笑顔でそう言い切り、カイムの唇に自分の唇を軽く触れさせた。
「え?」
 思わず瞬きをするカイム。そっと自分の唇を撫でる。それがキスという行為であるということが分からなかったわけではない。それでも、戸惑いは隠せなかった。
 もっとも、ミィにとってはその困惑も予想内だったのだろう。
「ありがと、マスター」
 そう言ってから、屈託無く笑ってみせた。

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