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第8話 ミドリおやすみ


「ふあぁ……」
 ミドリは欠伸をしていた。眠そうに目を擦り、くったりしている。窓の外は暗くなっていたが、うっすらと夕日の明かりが残っていた。
「眠いのか? まだ七時前だぞ」
 時計を眺め、カイは告げる。
 パンと、野菜と肉のスープが夕食だった。画家としての収入で生活できるとはいえ、贅沢はできない。無駄遣いを避ける意味もあるが、贅沢をすると向上心と緊張感が減り、創造力が落ちてしまうこともあるらしい。
「うん。でも、眠い……」
 言ってぱたりとテーブルに倒れた。帽子が落ちるが気づきもせず、ミドリは寝息を立て始める。眠っているようだった。
「ミドリってやっぱり植物なのか? 日が沈むだけで寝ちゃうって」
 頭をかいてから、カイは眠ったミドリと落ちた帽子をそっと持ち上げた。
 台所を出て、階段を上り、二階の自室に移動する。歩いても階段を上っても、ミドリは起きる気配もなかった。朝まで起きないのだろう。
 机とベッドと本棚の置かれた自室。
「早寝早起き。健康な生活だなぁ」
 机の上に置かれた小さなベッド。ミドリのための作ったものだ。絵を描いた後、適当な木や布を使い、一時間かけて制作。工作に夢中になってしまい、かなり精巧な代物に出来上がっている。寝具なので、精巧過ぎて困ることはない。
 本人は喜んでいた。
 カイは布団代わりの布をめくり、にミドリを寝かせる。羽のことは気になったが、頑丈だから大丈夫と言われた。丁寧に布をかけ、帽子を傍らに置く。
 ちなみに、布は絹製。以前フェルから貰った布である。布だけ貰ったので使用目的に困っていた。普通の布では粗いので絹製で丁度いいのだろう。
「おやすみ」
 カイは一言呟き、部屋のドアをしめた。

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