Index Top 第5章 戦争が始まる

第3節 最強のプログラム


 迎え撃つように、スティルが貫き手を放った。確かに、速い。
 が、それを座り込むほどに体勢を低くして躱す。今度は、右足が振り上げられるが、レイはスティルの左足を払っていた。両足が地面から離れ、体勢が崩れる。
 全身のバネを使い、レイは相手の腹にテンペストの柄を打ち込んだ。スティルは地面と平行に宙を飛び、本社の正面に突っ込む。ガラスの割れる音
 テンペストを引き絞り、レイは走った。正面ホールの壁にめり込んだスティルに狙いを定める。スティルは、体勢を立て直そうとしているが――
「十三剣技・十一猛虎!」
 突進とともに放たれた猛烈な連続突きが、スティルの身体に襲いかかる。だが、足は止めない。壁を何枚も突き破りながら、会社の奥へと突き進んでいく。
 やがて、会社の中央にある吹き抜けに出た。
「六雷光!」
 最後の突きが、スティルを向かい側の通路に叩き込んだ。ガラスが割れ、激突した壁に亀裂が走る。手応えはあったが、浅い。
 レイは吹き抜けの中央まで移動した。石畳の敷かれた床。吹き抜けは屋上まで続いている。屋上までの高さは、五百メートルほどか。
「なるほど。僕一人じゃ、倒すのは難しい」
 全身に傷を負ったスティルが歩いてくる。試作機と言うことで防御面をほとんど考慮されたなかった自分とは違い、スティルの防御は強固だ。甘い斬撃は効かない。その傷も見る間に修復されていった。自己修復機能だろう。
 突き破った壁の穴から、四体のオメガが現れる。
「レジスタンスは、一号機と二号機で対処できるだろう。しかし、君は違う。試作機とはいえ、レオン・シルバーの記憶と経験を直に受け継いだアンドロイドだ。どんな技を使ってくるか分からない。確実に……破壊させてもらう」
 四体のオメガは、レイを囲むような位置に移動した。
 レイは視線だけでそれを見回す。成り行きとはいえ、オメガ四体を引き止められたのは、幸運だった。もし、レジスタンスの方に三体向かっていたら、レジスタンスは間違いなく壊滅させられていただろう。二体でも危険なことに変わりはないが。
 問題は、自分がこの四体と一人に勝てるかどうかだ。
「それと、もうひとつ」
 スティルは笑いながら、
「僕の力が、この程度だと思わないで欲しい」
 そう言うと、両腕を広げて、
「プログラム・インヴァルネラブル――起動!」

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13/6/9