Index Top 第4章 明かされた事実 |
|
第4節 最強のアンドロイドたち |
|
その言葉に、全員に動揺が走る。 「オメガの汎用機だと!」 「確かな情報なのか!」 オメガの名前は、全員が知っているだろう。デウス社が造ろうとしている、最強の戦闘用ロボット。たった一体で、軍隊の一大隊を壊滅させるほどの戦闘能力を有する。 その試作機が、自分だ。 「使われたAATの量と流れた予算からするに、数は六体ね。もしかしたら、六体より多く造られているかもしれないけど……。あたしが調べた限り、基本戦闘能力はレイとほぼ同等。ただし、レイみたいな複雑な人格が組み込まれたものはないわ。レイの脱走で懲りたみたい」 ミストはラインを見やり、 「レジスタンスの戦力はどれくらい?」 「それほど大きいとはいえない……。人数だけを言えば、連絡を取れるだけで、百人いるかどうか。武器は市販のものしかない。それも、多くはない」 鎮痛な面持ちで、ラインが呟く。 「あたしが持ってきた特殊装備は、三十人分」 呟きながら、ミストは考え込むように目を伏せた。レジスタンスの力をどう使おうと、オメガ汎用機六体を倒すことはできない。 それを見て、レイは静かに断言する。 「四体は俺が倒す」 「…………」 全員が視線を向けてきた。 「剣士たるもの、一度言ったことは絶対にやりとげなければならない――」 レイは不敵に呟いて、会議室の入り口の傍らを見やる。そこに立てかけられた、テンペスト。自分が持つ、最強の武器。 口調を変えず、レイは続けた。 「たとえどれほどの性能を持とうと、どれほど高度な戦闘のプログラムが組み込まれていようと、実戦での経験は補えない。実戦経験のない素人四体くらいは、俺一人で何とかなる。何とかしてみせる――」 「分かった」 頷いたのはミストだった。何かを決心した口調で。 「残り二体のうち、一体はあたしに任せて」 その発言に、視線が一斉にミストに集まった。 ミストは気丈に笑いながら、 「スパイだって気づかれる前に、あたし造った戦闘兵器を持ってきたの。一時期は、オメガ汎用機の代わりになるとまで考えられた兵器よ。操作が複雑で、造ったあたしにしか扱えないけど、一体くらいは何とかできると思う」 「では、残りの一体を我々レジスタンスが撃破することになるか。ミスト博士が持ってきてくれた装備を使って」 締めくくるように、ラインが呟く。 「デウス社制圧作戦は仮決定したとして、データ公表はどうする? 外部へ続く通信回線が切断されていては、外部との連絡を取ることもできない」 「直接、回線につなぐしかないわね――」 ミストが言った。 ディスプレイの地図に、六つの緑の点が表れる。そこが、通信施設だ。 「この街にある、通信施設のどこかを占拠して、機能を回復させて、不正データを発信すればいいわ。もちろん、あたしが作った連鎖送信ウイルスを添付してね」 「連鎖送信ウイルス?」 「データが送り込まれたコンピューターと通じているあらゆるコンピューターに、強制的に同じデータを送り込むウイルスよ。これを使えば、各国政府のコンピューターから、一般のパソコンまであっという間に不正データが行き渡るわ」 そこまで言うと、表情を曇らせ、 「だけど、あっちも通信施設のことに気づいてるしょうね。レジスタンスが通信施設が占拠される前に、施設自体を爆破する」 「それならば、チームを分けよう」 ラインが言った。 「ひとつは、デウス社制圧チーム。もうひとつは、通信施設チーム。前者は、レイ殿とミスト博士、あとレジスタンスの人間三十人。後者は、アーディをリーダーとしたレジスタンスの残り全員。すぐに取り掛かってくれ」 「はい」 返事とともに、ラインを残してレジスタンス全員が部屋を出て行く。 ラインは椅子から立ち上がり、杖を突きながらミストの元へ歩いてきた。 「ミスト博士――」 ポケットから取り出した一枚のディスクを机の上に置く。透明なケースに入れられたディスク。表面には何も書かれていない。 それだけ言うと、ラインは部屋を出て行った。 四人だけが残る。 「二人とも、これを使って――」 ミストは懐から取り出したものを、机に乗せた。 銀色の柄と、黒色のマガジン。 「何だ? これ……」 「AATよ。剣柄の銘は、キャリバーン。コルブランドの元になったビームソード。マガジンは圧縮エネルギー弾を生成する、小型装置グリフォン。徹甲弾を越える貫通力を持った高密度エネルギーの弾丸を、ほぼ無制限に撃ち出せるわ」 「これを、わたしたちに、くれるんですか?」 訊いてくるクキィに頷くと、ディスクを手に取り、 「そう。だから、これを持ってこの街を逃げて」 |
13/4/21 |