Index Top 第2話 雨の降る前に

エピローグ


 窓から差し込む朝の光。日曜日の朝は静かだった。
 卓袱台に並んだ朝食。白いご飯と味噌汁、卵焼きと醤油、味付けのり。休みの日は朝食を食べない事が多いが、今日は沙雨に頼まれ作っている。
「今日は普通に動けるな」
 わきわきと手を動かしながら、慶吾は正面の沙雨を見つめた。
 普通の箸を器用に動かし、ご飯を口に入れている。
「今回は二度目だからちゃんと加減した。アタシの精力も適量渡しているし、体調に目立った変化は起こらぬだろう。同じ失敗は犯さぬ」
 醤油を掛けた卵焼きと味噌汁で手早くご飯をかき込んでいく。あまり噛まずに呑み込んでいた。沙雨は食べるのがやたらと早い。
 あっという間に朝食を平らげてしまう。
「ごちそうさま」
 両手を合わせて一礼。
 沙雨は時計を見た。朝の七時五十分。
 食べ終わった茶碗と皿を重ねてから、椅子から降りる。
「では、そろそろ出発だ」
「もう行くのか、早いな」
 卵焼きを箸で切りながら、慶吾は尋ねた。
 前回来た時は昼過ぎまで部屋にいた。慶吾が動けなかったので部屋の掃除を押し付けたりしたのも理由だが。それとは別に今日は急いでいるように見える。
 沙雨は駅のある方向に指を向け、
「九時の特急に乗るには、そろそろ出発しなければならん。次来るのは……三ヶ月後くらいか。その時はまた宿を貸して欲しい」
 と、見上げてくる。
 その瞳をきらりと輝かせ、
「あと、次はカレーライスが食べたいな。ビーフカレーを頼む」
「調子に乗るな」
 慶吾の人差し指が、沙雨の額を弾いた。

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11/9/16