Index Top 第6章 それぞれの決着

第9節 さよならだ


「ライン・ゴールドエッジ」
 無感情に、オメガがその名を呟く。
 壊れかけたオメガを目の前にして、ラインは不自然なまでに心が凪いでいるのを自覚していた。自分の命は、あと数秒。
 オメガが壊れた右腕を振った。
「おっさん!」
「ラインさん!」
「マスター!」
 みんなの声が耳に飛び込んでくる。これが、自分が聞く最後の声となるだろう。
 ラインは目を閉じた。
(あとは、仲間が何とかしてくれる。ミスト博士もいるし、レイ殿もいる。国際連盟も動いてくれる。私がいなくなっても、もう大丈夫だ)
 無音の暗闇の中で、衝撃を感じる。
 オメガの貫き手が身体を貫いたのだ。痛みは感じない。五感は止まっている。攻撃を受けたという事実だけが、脳裏に刻まれる。
 その最期の時の中で。
「さよならだ……」
 ラインは杖の隠しスイッチを押した。
 義肢に仕込まれた小型の物質分解爆弾が爆発する。

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13/10/13