Index Top 第1話 雨の降る日に

エピローグ


「気持ちの良い朝だ」
 開いた窓から差し込む朝日。
 心地よい日の光を受けながら、沙雨が背伸びをしている。昨日と変わらぬ白い上衣と紺色の袴姿。同じものではなく、同じような服を何着も持っているらしい。
「おかげでかなり精気の補充はできた。感謝する」
「うー……」
 ベッドから沙雨を眺めながら、慶吾は呻いた。
 身体に力が入らずまともに動けない。まるで芯が抜けてしまったかのように。今日が休日だったのは幸いだろう。
 黒髪を指で梳き、沙雨が振り向てくる。
「神婚術とは神と交わり、精気を与えたり貰ったりする術の一種。その性質故、普通の性交よりも多大な快楽を作り出す。その快楽に魅入られて溺れる者もいるとかいないとか。昨日は少しやり過ぎた」
「そう言う事は先に言ってくれ……」
 額を押え、慶吾は口を動かした。昨晩の事はあまりよく覚えていない。自分も沙雨も相当に乱れていたような気もする。
「いかんせん始めて使った術だし」
 苦笑いを見せながら、沙雨は目を逸らした。
「アタシの精気も渡してあるから、昼くらいには回復すると思う」
 そう付け足す。
 言われてみると、極度の脱力感の中に妙な清々しさがある。意識してようやく分かる程度のものだが。それが、沙雨の精気なのだろう。
 慶吾は沙雨を見つめながら口を開いた。
「実は今日、部屋の掃除と洗濯をする予定だったんだけど」
「分かった……」
 肩を落とし、沙雨はそう答える。

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11/5/31