Index Top 一ノ葉の再調教

中編 分身の術


「分身の術……?」
 二体の分身を見ながら、一ノ葉が警戒している。
 髪や服などの色遣い以外、一ノ葉と変わらぬ分身。瞳に意志の光は見られず、立っているだけで手足も脱力している。狐耳も尻尾も垂らしたままだった。
「ただの分身じゃないんだよ。だから、改だ」
 含みを持った笑みを見せながら、初馬は白分身の尻尾を無造作に握った。一ノ葉と同じ柔らかな毛に包まれた尻尾。先端が灰色である。
「ッ!」
 一ノ葉が自分の後ろ腰を押さえた。
 完全に人間の姿のため尻尾はない。だが、尻尾を触られている感覚を得ているのだ。感覚全共有分身。分身の感じるものは、本体に伝わるようになっている。
「貴様は……他に考えることないのか! いちいちワシにエロいことするために新しい術を使うな! 式神術とはそういうために使うものではない!」
 無遠慮に尻尾を撫でられる感覚に震えながら、一ノ葉が人差し指を向けてきた。
 初馬は両手で印を結びながら、
「どちらかというと、一ノ葉をいぢめるのが主目的かな。エロい……というか、お前がそういう事に妙に敏感だから、俺が取る手段はそうなる。三重式操りの術――」
「阿呆が……!」
 叫び返す一ノ葉が、その場にぺたりと腰を下ろした。式神に加えて、その分身二体の感覚を掌握する。簡単なように見えて、かなりの集中力と術式構成力が必要だ。
 初馬は卓袱台を片付け、カップ麺の空カップをゴミ箱に放り込んでから、一ノ葉をその場に立たせた。身体を操り、自分の所まで歩かせてから、その身体を抱えベッドに腰を下ろす。初馬の膝の上に座った一ノ葉。
「今度はどんな変態的なこと思いついた――」
 身体の操作権を奪われつつも、威嚇の声を向けてくる。
 初馬は右手で一ノ葉の頭を撫でつつ、分身に指示を送った。一度に操れるのは一ノ葉含めて二体まで。分身を動かしている状態では、一ノ葉本人を動かすことはできない。だが、術の効果で満足に動くことはできないので、暴れられたりすり心配もない。
 白分身と黒分身が顔を上げ、お互いに向き直る。
「待て、貴様……! お前らも……」
 一ノ葉が必死に何とかしようとしているが、無意味な抵抗だった。
 分身二体がお互いの身体に腕を回し、唇を重ね合わせる。二人の少女がお互いに口付けを交わすという艶っぽい姿。白と黒の尻尾が揺れていた。
「おッ、は……!」
 力の入らない両手で、一ノ葉は自分の口を押さえる。
 分身二体の感覚は、まとめて一ノ葉に還元されていた。白分身と黒分身双方の感覚が本体である一ノ葉に送られている。単純計算で二倍の感覚。逆に、一ノ葉の感覚も分身に送られ、その反応として現れていた。
「んっ……」
 両手で口を押さえて、一ノ葉が声を呑み込んでいる。
 暖房の効いた暖かい部屋。外はもう暗くなり、カーテンも閉めてあった。一人暮らしの静かな部屋。場違いな二人の少女が、唇と舌を絡ませている。
 二体の分身が右手と左手の指を組み、お互いに唇を重ねていた。お互いの咥内を舌で味わうような、濃く深くイヤらしいキス。小さな湿った水音が、妙に大きく響いていた。一ノ葉の興奮が伝わっているのか、二体の分身の頬が赤く染まっている。
 分身二体を動かしている初馬は、人形を弄っているような感覚だった。
「うぅ――ぅ……」
 身体を震わせながら、一ノ葉が両手で口を押さえている。いくら口を押さえても、自分の感覚ではないため、それを拒否することができない。分身の術を使えないため、分身の感覚を遮断できないという欠点が露骨に現れていた。
「貴様……」
 肩越しに睨んでくるが、初馬は眼を逸らして視線を受け流す。
 白分身が開いている手で黒分身の胸に触れた。二体の分身が身体を跳ねさせる。
「ン!」
 一ノ葉が右手で胸を押さえるが、それも無駄な抵抗だった。
 黒いシャツの上から胸の撫で、先端の突起を転がすように指先で弄る。細く滑らかな手の動きに形を変える胸の膨らみ。白分身は黒分身の両乳房を優しく、そして舐るように触っていた。微かに身体を捩っている黒分身。
 濃厚な口付けは終わっていない。
「……ッ」
 意識とは関係なく還元される感覚に、一ノ葉が歯を食い縛っている。力の入らない手を握り必死に耐えるその姿は、酷く嗜虐心をそそった。
 白分身の頭と腰の後ろに、黒分身が両手を伸ばす。
「待、てッ!」
 一ノ葉が鋭く声を上げるが、分身は止まらない。止まる理由がない。完全に初馬の制御下にある二体の分身。ただ、その感覚は一方的に一ノ葉に送られる。
 黒分身の手が白い狐耳と尻尾を掴んだ。
「……!」
 敏感な器官を触られ、分身が身体を強張らせるのが分かった。狐耳と尻尾を掴まれた感覚が一ノ葉に伝わり、その反応が分身に送られた結果だろう。
 だが、一ノ葉が分身を動かすことはできない。
 初馬の操る黒分身が、白分身の狐耳と尻尾をほぐすようにこねている。その感覚は遮るものものなく、一ノ葉本人に伝わっていた。
 二体の分身の感覚をひとつの身体で受け止め、一ノ葉が擦れた声を絞り出す。
「やめろ、貴様……!」
「止めると思う?」
 初馬は両手で細い身体を抱きしめた。
 細い身体から伝わってくる、一ノ葉の疼き。
「何して、る……!」
「なんか、可愛いから」
 左手で一ノ葉の身体を抱きしめつつ、右手で頭を撫でる。
 生々しい口付けを交しながら、白分身は黒分身の胸を触り、黒分身は白分身の狐耳と尻尾を触っている。全身を無遠慮にまさぐられる感覚は、全て一ノ葉に伝わっていた。自分の身体は一切触られていないのに。
「黙れ……! 変態が……ッ……!」
 初馬に喉元を撫でられながら、一ノ葉が毒づく。身体はまともに動かせず、ただ首を動かして睨んでくるだけ。目元からうっすらと涙を流している。
 白分身が空いている右手をハーフパンツの中に差し込んだ。
 そっとショーツの上から秘部を撫でる。
「ぅ、ひッ!」
 一ノ葉の喉が引きつった。スカートの上から両手で下腹部を押さえる。
 その反応に構わず、白分身は指で秘部を撫で続ける。そもそも一ノ葉の意志では動かせないので、止めることはできない。指で割れ目を開きながら、ショーツの上から淫核や膣口へと中指を這わせた。その感覚は一ノ葉に全て伝わっている。
「んっ……ン……! いい加減に、しろ……。ん?」
 肩越しに初馬を睨んでた一ノ葉が、正面に眼を戻した。
 すぐ目の前に黒分身が立っている。白分身から離れ、一ノ葉の前まで移動していた。白分身は両手で自分の胸と秘部を弄り、自慰を続けている。
「貴様……。何する気だ……」
 分身を睨み付けるが、反応は無い。
 無表情のまま、黒分身は一ノ葉の唇を重ねた。
「ン――! むゥ……ッ」
 突然の行動に逃れようと身体を捩る一ノ葉。しかし元々力が入らないことに加え、初馬が後ろから抱き締めて両手を封じているため、何もできない。
 黒分身は黒い狐耳と尻尾を動かしながら、一ノ葉の背に左手を回し、その口を自分の唇と舌で犯し始めた。舌に舌を絡ませ、咥内を嘗めるように舌を蠢かせる。粘りけのある水音とともに、一ノ葉と分身の頬が真っ赤に染まっていた。
 口付けを続けたまま、黒分身が右手で自分の胸を揉み始めた。
「ぅぅ……」
 荒い呼吸を繰り返しながら、一ノ葉は分身の攻めを甘受していた。自分の感覚に加えて、分身の感覚も伝わってくる。それは、自分で自分を犯しているようなものだった。
 白分身が黒分身の狐耳に噛み付く。
「!」
 狐耳を甘噛みされる感覚に、一ノ葉が大きく身体を跳ねさせた。
 白分身は黒分身の狐耳を口に咥えながら、左手で尻尾を弄り始めた。付け根から中程まで、ゆっくりと扱きつつ黒い毛の奥へと白い指を潜らせる。
「ンン……」
 敏感な狐耳と尻尾を攻められる感覚まで加わり、一ノ葉は抵抗の意志すら残っていないようだった。幾重にも身体を貫く快感を、無抵抗に甘受している。
 白分身が右手を黒分身のハーフパンツへと差し込んだ。
 細い指が下腹部へと伸び、黒いショーツへと忍び込む。
「待……っ」
 微かに離れた口から拒否の言葉を発するも、黒分身の唇に塞がれまともに喋ることもできない。一ノ葉の右手の指が微かに動いていた。白分身が黒分身に伸ばした手の感覚も、伝わっている。尻尾を撫でる手の感触も同様。
 白分身は黒分身のショーツへと、右手を滑り込ませた。一ノ葉本人とは違い、分身は抵抗もしない。逆に両足を開いて、弄りやすい体勢を作っている。人差し指と中指を濡れた膣口から体内へと侵入させた。
「ンン、ンッ――!」
 体内に異物を挿れられる感触に、一ノ葉が太股をきつく閉じる。しかし、自分に直接行われていることではないので、自分の身体をどう動かしても感覚は遮断できない。
 左手で一ノ葉の身体を抱え、右手で猫をあやすように喉元を撫でながら、初馬は小さく声をかけた。一ノ葉の身体が熱く火照っているのが分かる。
「どうだ、面白いだろ?」
「貴様……ッ!」
 されるがままだった身体に、抵抗の意志が現われた。しかし、抵抗の意志があっても、何もできない。分身二体の感覚は、意志とは無関係に流れ込んでくる。分身の術を使えない一ノ葉では、感覚を遮断することもできない。
 だが、初馬が行ったことは意識を現実に引き戻すことだった。
「ん!」
 一ノ葉が手足の筋肉を伸縮させる。
 白分身が黒分身の秘部に触れさせた手を動かし始めた。親指で淫核を撫でながら、二本の指でゆっくりと膣内をかき回す。
「んッ……くっ、ぅ……!」
 一ノ葉の目から涙がこぼれていた。
 絡ませ合う舌の感覚、無遠慮に撫でられ揉まれる胸の感覚、歯で甘噛みされ舌で嘗められる狐耳の感覚、根本から扱かれ五指でこねられる尻尾の感覚、右手で掻き回される秘部の感触。そして、それらを行う手や口の感覚。
 全てが一人の身体に襲いかかる。
「ううっ、……んんッ――! はっ、ぁぁ……!」
 三人分の感覚を全て受け止め、一ノ葉の身体が震えていた。口元から垂れる涎、目元から流れ落ちる涙。意識はあるが、思考は止まっているようだった。酔っぱらったかのように頬が赤く染まり、悩ましげな息が喉を動かしている。
 思考の許容量を超えた快感が、一ノ葉の身体を駆け巡る。身体は熱く火照り、眼から思考の光が消えていた。自分の意志とは無関係に発生する大量が、身体を蝕んでいく。一ノ葉はそう遠くないうちに絶頂を迎えるだろう。
 だが。
「解除」
 初馬は両手で印を結んだ。
 それで式神分身の術が解除され、二体の分身が一瞬にして消えた。霊力を込められた人型の紙が二枚、音もなく床に落ちる。
 快感の根源が消え、一ノ葉はそのまま脱力した。
「あ……ぅぅ……」
 肩で息をしながら、一ノ葉が虚ろな眼を床に向けている。
 初馬はポケットから新しい人型紙を取り出した。それを一ノ葉の目の前に持ってくる。それを見て、一ノ葉が息を止めるのが知れた。
「分かっていると思うけど、まだ終わってないぞ?」
 左手の指で一ノ葉の喉元をくすぐりながら、初馬は告げる。

Back Top Next