Index Top 第7話 夏の思い出?

第3章 ちょっと後悔


 リリルの口が浩介の首筋に触れる。
「……っ」
 浩介の喉から、微かな声が漏れた。
 歯で首元を甘噛みしながら、舌を這わせるリリル。右手で浩介の左腕を掴んだまま、左手でお腹の辺りを撫でている。それだけの動作なのに、身体の芯が熱くなっていた。
「おい、お前……」
 浩介が小さく呟く。お腹を這う指先から、熱さと寒さが入り交じったような痺れが広がっていた。感じているのだと、理性が告げている。
 首筋をしゃぶりながら、リリルが視線を向けてきた。
「驚いたか? 大体その身体を見れば、どこが感じる場所なのかは分かるって。お前とは一度身体重ねてるしな。どこをどうすればいいかは、簡単だ」
「その理屈は、絶対におかしい……んっ」
 言いかけた言葉が止まる。
 リリルの右手が浩介の胸元へと滑り込んでいた。ブラジャーの中に人差し指を差し入れ、アンダーバストを丁寧に撫でている。決して強い刺激ではない。だが、的確に感じる場所を捕らえていた。さながら手品のように。
 いやらしい音を立てながら、リリルの口が浩介の肩口を舐めている。
「うっ、っ」
 左手がお腹から下腹へと移動していた。寝間着のズボンの中へと潜り込む左手。右足の付け根、ショーツの縁を何度か撫でてから、太股へと移動していく。
「どうだー、気持ちいいだろ?」
 首筋から口を放し、リリルが得意げに笑う。
 浩介は自分の右手に噛み付き、声を殺していた。無駄な抵抗だと知りつつ、やらずにはいられない。酷く軽率に無茶な頼みを聞いてしまった気がする。
 リリルは右手で優しく胸の膨らみを揉みながら、
「お前は素直に喘いでいいんだぞ? どうせそのうち堪えられなくなって声上げるんだから、今から我慢しても意味がないって」
「どこのエロオヤジだ、お前は……!」
 嬉しそうに目を細めるリリルに、浩介は言い返した。
 しかし、リリルの言うことは間違いではない。舐めるように蠢く両手が、胸と太股を這い回っている。粘り気を持った甘い刺激が、芯へと染み込んでいた。
「ぅっ、ぁ……」
 声を抑えるように、浩介は奥歯を噛み込む。
 リリルは手の平で胸を揉みながら、指で先端の突起を転がしていた。怖いほど手慣れた動きに、呼吸が乱れている。今まで何人もの女を抱いてきたのだろう。女なのに女性経験豊富というのはおかしな話だった。
「よしよし、いい反応だ」
 浩介の反応を見ながら、リリルが満足げに笑っている。
 指先が、軽く乳首を摘み上げた。痛いというには程遠い痛み。そして、痺れるような感覚に、背中が引きつった。尻尾の先がぴくぴくと跳ねていた。
「っあッ――!」
「そういえば、前に凉子が漏らしてたな……。お前は普通の女以上に敏感だって。言われてみれば、確かに敏感だよな。もう濡れてるし」
 他人事のように言いながら、リリルがショーツの上から大事な所を撫でている。じわりと熱を持った女性としての部分。濡れているか否かは自分ではほとんど分からないが、リリルの言葉は嘘ではないだろう。
 冷房の効いた部屋だというのに、身体は焼けるように熱い。
 リリルの尻尾がくねくねと怪しく動いている。
「やっぱり、攻めるならここだな」
 左手がズボンから引き抜かれた。そのまま、狐耳を摘んだ。
「っ!」
 喉から擦れた息が放たれる。両目を大きく見開き、浩介は呼吸を止めた。自分で触るのと他人に触られるのは違う。自分で触るのにはもう慣れたのだが、他人に触られるのは未だに慣れない。
「おぉ、やっぱり効く!」
 楽しそうに金色の瞳を開きながら、リリルは右手でほぐすように狐耳を弄っている。鋭い痺れが首筋から背筋を通って下腹部まで突き抜けていった。歯に力が入らない。耳の弄り方は凉子よりも確実に上手いだろう。
「うっ……あっ、はっ――」
 喉から漏れそうになる声。浩介は自分の右手に噛み付いて堪える。噛み締めた口元から、うっすらと涎が滲んでいた。だが、意識を揺さぶる電撃のような快感に、声を完全に抑えることはできない。
「そう我慢するものじゃないぞ? 気持ちいいなら気にせず声出しちゃえよ。減るもんじゃないし。アタシもお前の声聞きたいし」
「うる、さい……」
 リリルの言葉に、小さく言い返す。
 今まで胸を弄っていた手が離れた。狐耳からも手が離される。
「強情なヤツだな。――って、お前が我慢しても、アタシが困るわけじゃないからいいんだけど。そういえば、ひとつ訊きたいことがあった」
 右腕を浩介の背中に回し、そのまま身体を起した。
 浩介は荒い呼吸を繰り返すだけで、まともに言葉を発することもできない。リリルの右腕が支えていなければ、倒れてしまうだろう。ベッドに落ちた両腕。力が入らず持ち上げることもできない。
 尻尾を左右に動かしつつ、リリルは片眉を上げた。
「お前、あれから何回自分で慰めたんだ? 女として」
「一回も、無いって……」
 浩介は何とかそう答える。完全に男の頃は一日一回ほど行っていたが、狐神の女になってからはほとんどやっていない。男の姿の時で一週間に一度ほど。女として自分を慰めることは、最初の一回切り一度もない。
 性欲の感覚が以前とは全く別物になっているようだった。
「ふーん。そんなものなのかね?」
 意外そうに頷いているリリル。何となく口にしてみただけで、本当に興味があるわけではないようだった。疑問の優先順位は低いのだろう。
 浩介は反撃のつもりで訊く。
「お前は、どうなんだよ――」
「乙女の秘密だ」
 不敵に微笑み、リリルが言い切った。その言葉にふっと脳裏を掠める記憶。リリルがやたらと口技が上手かった理由。魔法の分身で自分を慰めていたのかもしれない。
 それを尋ねる暇もなく、リリルが動いていた。
「さて、休憩も挟んだし。続き行くか」
 そんなことを言いながら、ブラジャーを外した。一瞬の早業で背中のホックを外し、透化の魔法を用いて胸から取り去る。肩に現れる胸の重さ。
 投げ捨てられた水色のブラジャーが床に落ちた。
「相変わらずいい胸してるよ。形といい手触りといい柔らかさといい、一級品だな」
 寝間着の前をはだけ、露わになった乳房をうっとりと眺める。左手が優しく膨らみを撫でていた。ご馳走を見つめるような金色の瞳。
「行くぞ」
「ひっ!」
 慌てて自分の口を塞ぐ浩介。肩が大きく跳ねる。
 リリルが右乳首を口に咥えていた。前歯で転がすように刺激しながら、舌先で先端を舐める。さらに軽く吸いながら、上目遣いで挑発するように見上げてくる。左手の愛撫は止めていない。
 浩介は喉を震わせながら、声を絞り出した。
「あっ、ああっ――。くぅ、うぅっ、待て、待っ……!」
「はい、狐耳と尻尾」
 律儀に答え、リリルが右手で左の狐耳を、胸から放した左手で尻尾を掴む。
「ふぁッ!」
 再び神経を駆け抜けた走った電撃に、浩介は手足を強張らせた。身体の制御が、自分の意識から離れていく。逃げることもできず、リリルの攻めを甘受することしかできない。焼け付くような快感が、波となって脳を襲っていた。
 狐耳を優しく揉み解しながら、尻尾を丁寧にこねるリリル。
「獣族ってこうされるのがかなり効くんだろ?」
「あ゙がっ!」
 中指が狐耳の中へと差し込まれた。
 目元から零れる涙に、視界が霞む。獣耳の中は、本当の急所。咥えていた右手が、ベッドに落ちる。顎が痺れて力が入らず、歯を食い縛ることもできない。まるで狐耳自体が性器であるように、強烈な快感を発していた。
「ああ、うう……ぐっッッ。そ、れっ……ああッ!」
 小刻みに跳ねる身体と、痙攣する横隔膜。まともに声も出ず、呼吸もままならない。
 リリルの手の動きは、凉子のものより数段上手かった。今まで何度も同じ事をやったことがあるのだろう。そんな経験じみたものを感じる。
 意識が飛びそうになりながら、浩介は必死に堪えていた。
「アタシの攻めに意外と頑張るねぇ。そうでないと歯応え無いんだけど。でも、そろそろ一度イった方がいいんじゃないか? かなり苦しそうだし」
 何かがショーツの中へと滑り込む。
 口は胸に、右手は狐耳に、左手は尻尾に。では何が? 朦朧とする意識の中で、浩介はそんなことを考え、辛うじて答えを出した。尻尾。リリルは尻尾をかなり自由に動かすことができる。
 そう理解した時には遅かった。
「ッッ――!」
 目を大きく見開く。下腹部から脳天まで突き抜ける衝撃。
 強烈に熱い寒気。射精の数倍の快感が、下腹から脳天まで突き抜ける。浩介は声にならない声を発していた。リリルの尻尾の先端が淫核を執拗に撫で回している。
「あッ……は、はっ、くぁ……」
 何度も達しながら、浩介は身体を跳ねさせていた。筋肉が勝手に収縮し、全身を不規則に悶えさせる。だが、まだ完全に絶頂を迎えていない。本能がそれを理解している。そして、そろそろ限界に近いことも。
「さ、これで最後だ」
 リリルの尻尾が秘裂を縦に一撫でした。同時に、胸や狐耳、尻尾への愛撫を一弾強いものとする。今まで意図的にずらしていた攻めを重ね合わせた、文字通りの同時攻撃。
 ひとたまりもなかった。
「――ッ! アアッ!」
 浩介は弾けるように筋肉を収縮させる。手足を硬直させ、大きく仰け反りながら舌を突き出し、声にならない叫びを上げていた。自分がどうなっているのかも分からない。意識が吹き飛ぶほどの衝撃に、視界が真っ白に染まる。
 数瞬か数秒か。はたまた、数分か。
 浩介は何も言えぬまま、ベッドに倒れていた。全身から汗が噴き出している。言葉は出てこない。ひたすら荒い呼吸を繰り返しながら、
「死ぬ、かと、思った……」
「相変わらず大袈裟だな、お前は。イったくらいで死ぬわけないだろ?」
 ベッド脇に立ったリリルが苦笑混じりに見下ろしてくる。自分の尻尾を口の前まで持ってきて、濡れた先端を舌先で舐めた。恍惚とした表情で、小さな息を吐き出す。
 浩介は何とか言葉を吐き出す。
「続ける、のか?」
「当たり前だろ、お前は達したけど。まだ、アタシは全然気持ちよくないからな。アタシが満足するまで付き合ってくれよ、ご主人様? そういう約束なんだから」
 リリルが、手を持ち上げる。手の平に集まった魔力と、見たこともない魔法式。それほど複雑なものではないようだが、効果を読むことはできなかった。
「High recovery そして、Clean up!」
 放たれた魔力が浩介の身体を包み込む。
 ひとつは回復の魔法のようだった。疲労困憊の身体から、疲労が抜け落ちる。回復したと言っても、動けるようになった程度だろう。およそ全回復とは言えない。
 もうひとつの魔法は効果がよく分からなかった。
「お前の身体を綺麗にしたんだよ」
 解説するリリル。今度は両手に魔力を溜めて、
「Shadow Doll」
 自分の傍らに分身を作り出す。今のリリルと同じ姿の分身。銀色の髪や赤い前髪、淡褐色の肌、金色の瞳、着ている下着。それらに違いはない。しかし、表情が薄くどこか人形じみているので、分身であることはすぐに分かる。
「何する気だ?」
 浩介は頬を引きつらせた。

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