Index Top 妖精の種

第11話 増殖?


 フェルは絵を眺めながら頷いた。
「いい絵だ。よく描けている」
 カイが描いたミドリの絵。昨日キャンバスに描いた絵と、今日の午前中に画用紙に書いたミドリの絵。こちらは鉛筆による下書きで、色は塗っていない。
「妖精画というのは今までいくつも見てきたが、やはり本物は違うな」
 満足げに頷いている。
 机の上に腰を下ろしたミドリは、フェルの目の隈を眺めながら、
「副会長さん、眠そう。寝てないの?」
「うん。一昨昨日から一睡もせずに木像彫ってたからね。いや、久しぶりの作業に熱中してしまったよ。でも明後日頃には良い物が出来きそうだ」
 あっけらかんと答える。
 今は眠そうだが、昨日も一昨日も元気だった。四日寝てないと言っわれても、信じられない。若い頃は一週間の徹夜も平然と行っていたらしい。図抜けた体力と精神力。
 フェルはぴっと右手の人差し指を立てる。
「それより、カイくん」
「何でしょう?」
「この子以外の妖精も描いてみたいと思わないかい?」
 怪しげな笑みを浮かべながら、言ってきた。
 猛烈に嫌な予感を覚えながら、カイはミドリを目で示す。
「ミドリは一人しかいませんよ?」
「例の種なんだが、実はあと十七個あるんだ」
 ポケットから取り出した袋を机に置いた。口に紐を通した布袋。三つの種がこぼれる。指先ほどの茶色い種。一昨日フェルから貰った種と同じものだった。
 ミドリが種をひとつ掴み上げる。
「これから、わたしの弟や妹が生まれるの? 見てみたい」
「駄目、駄目だから」
 カイはミドリから種を取り上げると、机にこぼれたものと一緒に袋に戻した。袋の口を縛ってフェルに差し出す。
「何が出てくるのか分からないので、遠慮させていただきます」
「そう。残念だ」
「うん。残念」
 ため息をつく二人を見て、カイはこっそりとため息をついた。

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